スマートフォンにアプリストアがあるのなら、自動車にもあって良いのではないだろうか。
少なくともいくつかの大手自動車メーカーはそう考えている。そうしたメーカーは、自動車のダッシュボードのモニタから直接購入できる、自動車用に選りすぐられたアプリの基盤を構築しようと取り組んでいる。
スマートカーやコネクテッドカーのアプリケーションという概念は、6月にニューヨークで開催されたCE Weekで注目を集めた話題だった。5月にはGeneral Motors(GM)が米CNETに対して、自社の自動車向けの最初のアプリが2013年後半に発表される予定であると語った。AT&Tとの提携がこれを後押ししており、多くの車種に4G LTE接続を搭載することを目指している。
説得力のある言葉や刺激的な宣伝の増加は、自動車メーカーが時代の変遷に適応し、テクノロジを用いて自社製品を差別化することに幅広く取り組んでいる事実を示している。自動車業界ではそれぞれの車種を複数年のサイクルで開発し、一貫性のある年間スケジュールのもとに出荷するのが慣例になっているが、同業界が手を携えようとしているのがモバイル端末業界で、この業界では、スマートフォンやタブレットが1カ月おきに発売されるのが普通で、絶え間なくイノベーションが続いている。
自動車メーカーは従来、販売時点に焦点を当てており、顧客が店舗から去るとその顧客からは離れてしまっていた。しかし今、より継続的なサポートを行っているモバイル端末業界を手本にし始めている。答えはソフトウェアにある。自動車メーカーはアプリとソフトウェアをアップデートすることでスマートカーが古くならないようにし、顧客との関係を強化できると考えている。
GMのバイスチェアマンであるStephen Girsky氏は2月に開催されたMobile World Congressの基調講演で、「われわれは単に顧客がほしがるものを提供しようとしているのではない。顧客が将来ほしがるだろうとわれわれが予想するものに取り組んでいる」と述べた。
これは消費者に取り入ろうとしているのではない。この動きには大金がからんでいる。GartnerのアナリストのThilo Koslowski氏は、コネクテッドカー関連のハードウェア市場はこの10年の終わりには300億ドル規模まで成長すると予測している。それ以外に200億ドルのサービスの売上機会が見込まれる。
しかしスマートカーを競って発売しようとする中で、自動車業界は顧客を困惑させる危険を抱えている。多くの企業はそれぞれに異なる、互換性のない方法を採用しているため、将来的には競合する自動車メーカー間でのプラットフォーム戦争につながり、自動車アプリに対する悪い印象を消費者や開発者に与える心配がある。また自動車メーカーは、自動車用アプリが豊富にそろうストアを開設し運営していく仕事にはあまり向いていないと思うようになるかもしれない。
そうした懸念も、熱意を冷めさせてはいない。ある意味では、自動車はアプリにとって理想的な「目的達成手段」であるとKoslowski氏は述べる。複数の物理的なコントローラやディスプレイを設置する空間があるし、音声コマンドをドライビング体験に追加するのは理にかなっている。バッテリ電力が阻害要因になることはないし、携帯用無線を追加するスペースも山ほどある。
「自動車は究極のモバイル端末になれる」(Koslowski氏)
自動車用アプリというアイデアには、多くの可能性がある。診断アプリは自動車の状態をモニタリングして、修理が必要な場合には電子メールやテキストメッセージでアラートを送ることができる。インターネットラジオアプリを利用すれば、好きな音楽やニュース、道路情報などをカスタマイズできるし、天気アプリを使えば、運転者の現在地に合わせてリアルタイムの情報を入手できる。
Verizon Telematicsの先進戦略担当バイスプレジデントのTom Taylor氏は、「それこそわれわれ運転者がほしいものだ。より安全で、個人に合わせた方法で提供される、より多くの情報だ」と語った。緊急時のコネクテッドカーサービスを提供しているVerizon Telematicsは、1年前にVerizonに買収される前まではHughes Telematicsとして知られていた企業だ。
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