6月17日~6月23日のAppleに関連するCNET Japan/ZDNet Japanのニュースをまとめた「今週のApple一気読み」。
お陰様で本連載は、今回でちょうど1周年を迎える。読者の皆様、毎週のご愛読、感謝したい。
CNET Japanには、米国から配信される記事、日本で書く記事を含めて、Appleに関するニュースが毎週多数流れてくる。これらを定点観測的に毎週まとめていこう、というのが本連載の趣旨である。毎週のニュースを網羅しつつ、トレンドや話題になったトピック、トラブルなどをピックアップして解説してきた。
2012年6月のWWDC 2012は、故スティーブ・ジョブズ氏が登壇しない基調講演を迎え、iOS 6やMacBook Pro Retinaディスプレイモデルなどを発表していた。次期iPhoneの噂が流れ始め、Samsungとの訴訟が同年8月の米国での結審に向けて議論が高まっていた時期でもあった。
2012年秋にiPhone 5をリリースし、これまでにない成功を収める。2012年末の四半期、iPhoneが米国のスマートフォン市場で初めてトップに輝くほどだった。その一方で株価は、ちょうど1年前は582ドルから9月19日702ドル10セントを付けて急落。2013年6月21日の終値は413ドル50セントと低迷を続けている。
Appleのニュースは、新製品に多く注目が集まりがちだ。もちろん、Appleを語る上での醍醐味の1つでもある。しかし新製品以外にも、企業のガバナンス、生産管理、デザイン、国際関係、消費者とのコミュニケーション、小売店、ライバルとの戦い、そして開発者と構築しているエコシステムなど、様々な切り口で注目すべき現代の企業といえる。
今後とも、こうした視点で、Appleの定点観測を続けていきたいと思う。引き続き、よろしくお願いいたします。
WWDC 2013が終わり、発表内容に関する分析や総括に関する記事がまとめられるようになった。先週CNETでは、Appleが示した2本のビデオとメッセージに関しての考察記事が配信されている。
Appleはプレゼンテーションの中で、よく仮想敵(あるいは実際の競合他社)を引き合いに出し、Appleとライバルが違っていることをアピールする手法が採られる。今回も、モバイルOSのバージョンの分断化、モバイルウェブのトラフィックのシェア、開発者が上げる利益など、他社より優れている数字を披露し、その優位性を指摘した。
しかし少し情緒的に訴えかけようとする演出もあった。「Designed by Apple in California」というフレーズを詳しく説明し、いかにデザインにこだわっているか、我々の生活をどのように変えていくか、といったメッセージをビデオにまとめて公開している。記事では、これについて、Appleがあまり新製品を披露できていない点への理解を求めているという解釈をしていた。
変化もある。これまでインダストリアルデザイン担当であったジョナサン・アイヴ氏の肩書きがシンプルに「デザイン」に変更され、ハードウェア、ソフトウェアの体験を司る役割になったことを表している。iOS 7のデザインについても、普段言葉少ななアイヴ氏が非常に細かく方針を伝える場を作るという、肝入りのプロジェクトであることがうかがえる。
Google GlassやAppleから噂されるウェアラブルデバイスなど、2013年のトレンドとしては、ハードウェア志向が強い1年となっている。しかしAppleはiOS 7の刷新や機能の充実など、引き続きソフトウェアによる進化を印象づけるWWDCを迎えている。こうしたトレンドとどのように呼応していくのか、2013年の後半に注目である。
もちろん、面白いハードウェアの登場は、世界中のユーザーや投資家からのリクエストがあることも伝わっているはずだ。
アップルが示した価値観--WWDCで披露した2本のビデオとそのメッセージ(6月17日) アップルのアイブ氏肩書き、「インダストリアルデザイン」から「デザイン」担当に(6月18日)先週末、非常に興味深いビデオが公開されている。Steve Jobs氏がNeXTに在籍していた1994年のインタビューで「私の人生でこれまでに成し遂げたことすべてが、私が50才になるまでに廃れてしまうだろう」と語っていた。
その後Jobs氏はAppleに戻り、iMacを皮切りにして、iBook(現MacBook)、MacBook Pro、Mac mini、Mac Pro、MacBook Airと一度シンプル化したMacの製品ラインを拡充し、PC全体で18%成長の時代にMacは100%成長を達成するブランドに育て上げている。確かに初代Macintoshは忘れられたかもしれないが、Macはより使われるようになった。
その一方で、Jobs氏は次のコンピューティングデバイスに、タブレットについても2010年に発表し、新しい市場を作ってきた。教育分野での活用も積極的で、先週は米国最大の生徒数を誇るカリフォルニア州ロサンゼルス学区の全公立校の生徒1人1人にiPadが配布される事が決まっている。
Macが過去のものになるという予言は外れているが、新しいコンピューティングのデバイスを生み出した点は予言通りに事が進んでいる。
アップル、ロサンゼルスの全公立校に「iPad」を支給へ(6月20日)東京の裁判所で、Appleが主張するバウンスバックの特許をSamsungが侵害しているとの判断が下された。過去の機種が対象となるが、国内のスマートフォンの販売戦略にも影響を及ぼす可能性がある。米国、日本に限らず、AppleとSamsungの裁判所での戦いは昨年から継続中だ。
一方、米国政府当局や議会などでも、Appleはしばしば証言にたったり、対応を迫られたりすることが多い。NSAとは米国家安全保障局のことで、2012年12月1日から2013年5月31日の間に同社が米政府当局から受けた顧客データ要請件数は4000~5000件で、その要請で指定されたアカウントまたは端末数は9000~1万件にも上るという。犯罪捜査にウェブやモバイルのデータを活用するようになり、Google、Facebook、そしてAppleなど、アカウント数を多く保有するサービスに対して、捜査協力を求め、Appleなど各社もこれに応えている様子が透けてくる。
この問題については、犯罪捜査という大義に対して協力するという構造の反面で、ユーザーのプライバシーやセキュリティの問題に関係してくるとして、米国で議論を呼んでいる。例えばSkypeは、社内チームを組んでNSAに対して顧客データを簡単に引き渡せるようにしていたことが分かっている(関連記事)。
アップル、米政府当局による顧客データ要請件数を公表--NSAなどめぐる騒動を受け(6月18日)WWDC2013で、iTunes Radioを発表しストリーミング型の音楽サービスに参入することを告げたAppleだったが、発表はあくまでiOS 7の中で触れられただけで、サービスそのものの詳細と言うよりはどんなユーザーインターフェースで動くのか、を見せた程度で終わってしまった。CNETの記事では、レコード会社との契約を済ませたばかりのタイミングで「準備不足」という見方をしている。
iTunes RadioはモバイルデバイスであるiPhoneやiPad、Mac、そしてApple TVと連携しており、iCloudのアカウントを介して同期されるため、iPhoneで聞いていた音楽の途中からApple TVに引き継いで家のリビングで聞く、といったシームレスな音楽体験が待ち受けている。
他方、米国では高いケーブルテレビの契約に対してNetflixやHuluといったストリーミング型でドラマや映画を楽しむ事ができるサービスが人気だ。ケーブルテレビが100ドル近くになるのに対し、これらのサービスは7~15ドル程度で楽しめるため、非常に魅力的なのだ。Apple TVはこうしたストリーミングサービスに順次対応してきたが、ケーブルに流れているチャンネルとの直接契約も進めている。
iTunes Radioと同じスキームでチャンネルと契約をしていくと、1つのアカウントでiTunes Storeと連携するストリーミングサービスを音楽、ドラマ、映画で揃えられることを意味する。
Appleがテレビを作っているという話は長らく続いているが、コンテンツをきちんと既存のテレビ並みに揃えなければ始まらない、というのもまた、Appleのアイディアなのかもしれない。
「iTunes Radio」の勝機--アップル新音楽サービスが後発ながら示す可能性(6月20日)CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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