2011年6月の公開(当初は招待制)から約2年が経ったグーグルのSNS「Google+」。サービス開始以降、ユーザー数は堅調に推移し、2013年5月時点の月間アクティブユーザー数は1億9000万人を超える。また英調査会社によれば、2012年第4四半期のアクティブユーザー数では、Facebookに次ぐ世界2位にまで成長しているという。
「Orkut」や「Google Buzz」が不発に終わるなど、SNS事業では苦戦を強いられてきたグーグルが、なぜGoogle+をこれほどの巨大SNSへと成長させることができたのか。一方で、まだ普及しているとは言い難い日本市場には今後どのようにアプローチしていくのか。Google+ グローバル・マーケティング・ディレクターのマーヴィン・チャオ氏に聞いた。
Google+では当初から、家族や友人、会社の同僚など属性ごとに連絡先をグルーピングして、情報をシェアする相手を選べる「サークル機能」を提供し、他のSNSとの差別化を図ってきた。また、人と人の関係性を表した“ソーシャルグラフ”という言葉があるが、Google+では興味や関心のある物事の相関図である“インタレストグラフ”を中心にサービスを展開しているのも特徴だ。
このインタレストグラフを象徴するのが、2012年12月に追加された「コミュニティ機能」だ。家族や友人など知り合いだけの非公開のコミュニティから、同じ趣味を持つユーザー同士で交流できる一般公開のコミュニティまで、幅広い用途で自由に作成・参加できる機能となっている。この機能によって、興味・関心をベースにしたユーザー間のコミュニケーションが活性化しているという。
チャオ氏によれば、現在は“写真”を中心としたコミュニティの人気が高く、オフ会のような形で実際にユーザーが集まって観光地などの写真を撮る「フォトウォーク」というイベントも頻繁に開催されているそうだ。こういったコミュニティの活動は、料理やファッション、スポーツなどさまざまなカテゴリで見られるようになってきているという。
「ソーシャルコミュニティの未来を考えると、これからは単純な人と人のつながりだけでなく、共通の関心事を中心に、どのようにしていろいろな関係を築いたり事業を発展させたりしていくかが重要になる」(チャオ氏)。今後はよりインタレストグラフを軸にしたサービスを強化することで、他社と差別化していきたい考えだ。
GmailやYouTube、Google Chrome、Picasaなど、他のグーグル製品とシームレスに連携できるのもGoogle+ならではの強みだろう。たとえば、イベントを作成すればGoogleカレンダーに自動で登録され、そこに住所の情報があればGoogleマップで確認できる。Google Playストアではアプリのインストール履歴やGoogle+と連動して、お勧めのアプリを提示してくれる。
サークルや過去のクチコミ、現在地などに基づいてお勧めのレストラン情報を表示する「Google+ ローカル」機能などもある。信頼できる友人のレビューが掲載されていれば検索結果に優先して表示する。「あるレストランのレビューで1000人が3つ星と言っていても、1人の親しい友達が美味しくないと評価していれば、そちらのレビューの方が信頼できる」(チャオ氏)。
2月にはGoogleのアカウントを使って、他のウェブサービスやアプリにログインできる機能「Google+ Sign-In」も公開した。すでに他のSNSでも提供している機能だが、FacebookやTwitterでは、すべての友人に同じ情報をシェアしてしまうこともある。これがGoogle+ならシェアしたい相手だけに共有できる。たとえばITに関連したニュースであれば、テクノロジに興味のあるサークルにだけシェアすればいい。
また、PCからサインインした際には、そのユーザーのGoogleアカウントから、現在Androidスマートフォンを使用しているか、またサインインしたサービスのアプリをインストールしているかを判別し、スマートフォンに自動でアプリをダウンロードできるようにすることも可能だ。
チャオ氏は、Google+サインインを導入しているサービスの事例としてイラスト投稿SNS「pixiv」を紹介。pixivはGoogle+サインインを導入して新規会員率が21%増加し、直帰率が25%減ったという。また導入2日目にして、すでにFacebookアカウントでサインインするユーザーの数を超えたと説明した。
Google+を提供していく中で、“ソーシャル”という言葉の定義が変わってきているとチャオ氏は話す。「(サービス開始から)約2年が経ち、私たちの目指しているビジョンが他のSNSよりもずっと広いことを、皆さんも認識し始めてくれているのではないかと期待している。意味のあるソーシャルインタラクションを、グーグルのプラットフォームや製品全体で横断的に提供するということだ」(チャオ氏)。
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