「iTunes」の責任者Eddy Cue氏は先週、サンフランシスコで開催されたAppleの大規模な開発者カンファレンスで「iTunes Radio」を発表した。間もなくして、さまざまな競合他社や批評家が、同サービスは大騒ぎするほどのものではないと異口同音に切り捨てた。主に、非常に多くのストリーミング音楽サービスが既に存在しているという理由からだ。
インターネットラジオの現在の覇者Pandoraは、自社サービスの規模の大きさを報道陣に強調した。Pandoraの登録ユーザー数は2億人で、そのうち7000万人がアクティブユーザーであり、作成されたステーションの数は50億に上るという。Nokiaまでもが(そう、あのNokiaが)バイスプレジデントを登場させて、「当社は2011年にストリーミングラジオサービスを投入した」と主張し、Appleが後手に回っていることを示唆した。
華々しい製品発表を行ってきたAppleの歴史を考えると、同社の満を持しての音楽ストリーミング分野への参入発表は比較的地味なものだった。おそらく準備の時間が足りなかったのだろう。Appleは米国時間6月10日の基調講演を間近に控えた7日になって、ようやくメジャー音楽レーベル3社すべてとの契約にこぎ着けたからだ。
「当社は本日、新しい音楽を発見するための素晴らしい方法を発表する。iTunes Radioという名称だ」。Cue氏は同サービスを披露した際にこのように述べ、ステーションのキュレーションをAppleの音楽チームが(そう、人間が)行う仕組みを紹介した。同氏は、楽曲をスクロールして閲覧していくのがいかに簡単かを説明した後、観衆である6000人のApple開発者に向けてLed Zeppelinの「Whole Lotta Love」を再生した。しかし、iTunes Radioが、Appleが1年以上かけてようやく完成にこぎ着けたサービスであることや、同社は10年前に「iTunes Store」を公開して現在のデジタル音楽時代の幕を切って落とした企業であることを考えると、Cue氏は意外なほど控えめだった。デモに費やした時間は合計でわずか4分足らずだ。
Cue氏はiTunes Radioが最高だとは一度も言わなかったし、楽しいものだとさえ言わなかった。利用可能なストリーミングサービスの中で一番という言い方もしていない。また、Cue氏の前に基調講演に登場したほかのApple幹部陣は一様に「Android」をこき下ろしていったが、Cue氏はAppleのサービスに最もよく似たPandoraに一言も触れなかった。そうなると、iTunes Radioは自力で興奮を生み出さなければならない。iTunes Radioがうまく機能し、Appleの戦略が奏功すれば、そうした興奮が生まれるはずだ。
Appleにとっては非常に大きなチャンスだが、Appleが台無しにしてしまう可能性もある。
音楽ストリーミングは大きな注目を集め、レコード音楽業界で最も急速に成長する分野となったが、世界の多くの人々は今でもAM/FMラジオを聴いている。広告主が2012年に費やした約148億ドルの大半を米国のネットワークラジオが獲得したのはそのためだ。しかし同時に、オンラインでラジオを聴くラジオファンも増加しており、AM/FMラジオ局のストリーミングや、Pandoraのような純粋なデジタルラジオ局が利用されている。
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