日本マイクロソフトと教科書出版大手の東京書籍は3月29日、教育分野のデジタルデバイスの普及とICT利活用の推進で協業すると発表した。2社が提供する教育ソリューションを自治体や教育委員会、教育機関に共同で訴求する。
第1弾として、東京書籍はWindows 8用の学校生活支援アプリ「スクールパレット」をWindows Store上で無償公開し、日本マイクロソフトやパートナー企業とともに全国の教育現場に展開する。5月下旬にベータ版を配信。7月下旬に正式版をリリースする予定であり、2015年までに50万本の配信を予定している。協賛パートナーとして、内田洋行、ダイワボウ情報システム、富士通、東芝、NECが参画する。
スクールパレットは、児童生徒向けの時間割やデジタル教科書、教材プラットフォームとして機能するだけでなく、教員向けの校務支援機能もワンストップで提供しているのも特徴。先生用と児童生徒用の2つのモードを用意している。
先生用では、授業計画や時数管理、情報共有板、お知らせ掲示板、指導用教材などを提供。教育情報の活用と校務負担の軽減ができるという。児童生徒用では、時間割やスケジュール、学習者用教材など提供され、楽しみながら学習できる環境を提供するなどとした。
日本マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏は「スクールパレットは学校現場をトータルで支援するアプリ。児童や生徒にとっては、楽しい学習教材を探しやすい環境を提供できる」と説明。東京書籍代表取締役社長の川畑慈範氏は「Conduct(管理)、Communication(連絡)、Contents(資料)の3つのCを提供するのがスクールパレット。校務支援から授業支援までをワンストップで提供する」と語った。
授業前に連絡板を通じて先生同士が情報を共有したり、子供たちに教材を一斉配信したりといった使い方のほか、授業中には時間割からICT教材を起動させたり、最新ニュースを利用した学習を実現。放課後には児童や生徒が端末を自宅に持ち帰り、学習するといったことも可能になるという。
スクールパレットは、すでに和歌山市教育委員会でベータ版による試験導入が決定しており、今後、全国の教育機関への導入を目指すという。さらにスクールパレット向けに、教科書・教材会社、出版社などが300点以上のデジタル教科書や教材、教育コンテンツを配信することを決定しているという。有償で提供するコンテンツが半分、無償で提供するコンテンツが半分となる。
朝日新聞社や朝日学生新聞社、学研ホールディングスなどがニュースや教育用コンテンツの配信を決定しているほか、東京書籍が東書Eネットで提供しているコンテンツも無償で提供する。「コンテンツで儲けるということではなく、学校で安心して利用してもらえるということが一番の目的となる」(川畑氏)
これらの教育向けコンテンツは、Windows Azure上で配信、管理される。日本マイクロソフトは、クラウドを通じた配信だけでなく、教育コンテンツのデジタル化やアプリ開発のために支援する。「日本マイクロソフトでは構築から運用、サポートまで支援する体制を用意している」(樋口氏)
教育現場には現在、192万台のWindows PCが導入されているが、そのうちWindows XPベースのものが依然として90万台使用されているという。Windows XPのサポート期限を2014年4月に迎えることから、Windows 7やWindows 8環境へのシフトが見込まれる。今後の展開を見据えて樋口氏がこう語っている。
「Windows 8を搭載したタブレットの普及はこれからであり、Surfaceの導入を検討している例もあり、これから大きなうねりになるだろう。今回の取り組みを通じて、日本における初等、中等、高等教育での21世紀にふさわしい学校教育環境の実現に寄与することを目指す」
スクールパレットの監修者でもある、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科先端融合系教授の坂元章氏はスクールパレットのメリットをこう強調する。
「常時システムを立ち上げている常駐性、先生と子供がシステムの知識を共有できる共有性、すべての先生が使用する悉皆(しっかい)性が実現されるのがスクールパレット。システム自体が無償であり、予算の影響がなく、すべての先生が1日中使用し、先生と子供がシステムを共有できる。今回のシステムでは、ICTが文化を作るだけでなく、ICTが学校文化の一部になる。それが広がることになる。効率化を支え、促すものになる」
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