アップルは3月5日の深夜、日本向けに「iBookstore」をオープンし、電子書籍の販売を開始した。合わせて無料でダウンロードできるiOS用電子書籍リーダーアプリ「iBooks」のバージョン3.1を公開した。
現在は、アプリはもちろん、iTunes上にも「ブック」カテゴリが登場し、PCやMacからも購入できるようになっている。先行してきた音楽配信サービスやアプリなどと同様に、共通の「Apple ID」を使用して決済ができるのもアップルの強みの一つだ。
また、「iCloud」を経由して、購入した本や途中まで読んだブックマークなどを複数の端末で同期できる。通勤ではiPhoneで読み、自宅ではiPadの大画面で読む──といったことも手軽にできる。
なお、アップルから正式にプレスリリースが出たのは3月6日の午前9時半で、同日の未明までサイトが順次更新されていたようだ。もし正式オープン前の深夜にストアを見てラインアップにがっかりしたならば、今改めて見てみると印象が変わるかもしれない。
アップルによれば、正式な現在の取り扱い冊数は公表していないが「数万点」とのこと。毎週水曜日に更新し、今後もラインアップを拡充していくとしている。
すでにサービスをスタートしている「Newsstand」とは異なるもので、Newssandは新聞や雑誌などの定期刊行物を中心とし、iBookstoreでは書籍やコミックを中心にして棲み分ける。
iBookstoreではライトノベルやコミック、料理本、歴史書、伝記、絵本、児童書など、数百におよぶさまざまなカテゴリの本をラインアップする。
中でも注目はiBookstore限定の書籍やコミックだ。荒木飛呂彦氏の「ジョジョの奇妙な冒険」のカラー版PART 4はiBookstore限定での配信(各480円)で、このほかにも読み上げ機能の付いた「トイストーリー3 ずっと おともだち」(350円)などもある。
さらに、村上龍氏の小説「空港にて」(450円)「心はあなたのもとに」(850円)といった限定作品もある。心はあなたのもとにでは、より深く物語の世界に入り込めるよう、インタラクティブなメールが各章に盛り込まれており、電子書籍ならではの作り込みが見られる。
アップルは、「クオリティの高いブックストアを目指す」という。単に紙をスキャンしたPDFといったものではなく、ある程度作り込まれた本のみが対象になっているようだ。また、iBookstore上でも売れるものだけを紹介するのではなく、日本専任のスタッフがいるという。
電子書籍のストアでも、リアルの店舗と同様にどういう“棚”を見せるかが重要になってくるが、アップルでは日本でもすでに馴染みの深いMusic StoreやApp Storeと同じインターフェースを採用し、書籍の表紙と同じアイコンや「300円以下のベストセラー」といったトピックなどを用いている。さらに、「スタッフのお気に入り」ではできるだけ日本にあったものを紹介し、クオリティにも気を遣っているとした。
日本のiBookstoreにアクセスするには、iTunes Storeのリージョンを日本に切り替える必要があり、購入時は日本円で決済されるため、現在のところ海外は原則として対象になっていない。
iBookstoreでは、無料のものを除き、最低価格は50円から(App Storeは85円から)となっており、App Storeのようなグローバルなストアとは価格帯が異なるという。今後はiOS向けのアプリなどと同様に、海外への展開なども視野にいれていく考えとしている。
なお、iBookstoreで書籍を販売するには、日本独自の審査が設けられており、現在は出版社のみが対象になっている。一方で、アップルは一般のユーザー向けにMacでiPad用の電子書籍を作成できるアプリケーション「iBooks Author」を提供しており、個人の出版なども期待される。しかし、iBooks Authorはまだ完全な日本語対応版ではないとしており、日本語独自のルビや禁則処理などに対応した上で、今後検討していくとしている。
iBookstoreは2010年4月に開始され、これまでに50カ国で展開している。今回の日本での本格展開により51カ国になる。日本では、2005年8月にiTunes Music Storeが開始され、2008年7月にApp Storeがスタートした。映画コンテンツのダウンロードは2010年11月スタートしており、大きなコンテンツとしては4つめの展開となる。
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