2月25日~3月3日のAppleに関連するCNET Japan/ZDNet Japanのニュースをまとめた「今週のApple一気読み」。
筆者は先週、カリフォルニア州ロングビーチで行われたTED Conference 2013を1週間にわたって取材した。Appleは1984年に行われた初回のTEDで、初代Macintoshをデモしたことで知られる。このときソニーはコンパクトディスク(CD)のデモを行っている。
ソニーと違いAppleは現在TEDのスポンサーに名を連ねているわけではないが、カンファレンスのスタッフが使っているデバイスはほぼ全てiPadもしくはiPad miniであり、カンファレンスの様子を即日編集しているビデオや写真のプロダクションで利用される50台近くのマシンは全てiMacだった。Appleのテクノロジはカンファレンスの運営を支える存在になっているようだ。
先週は、AppleとSamsungの裁判に関する動きや、ファンドによる訴訟の解決、そして株主総会の開催などが行われ、製品以外のApple関連のニュースが多い1週間だった。
それでは、先週のニュースを振り返っていこう。
Appleから2013年にリリースされるとまことしやかにささやかれるようになった腕時計型のデバイスについて、どのような姿になるのか、あるいはどんな問題があるのか、といった議論が進められている。もちろんApple抜きでだ。
ユーザーはモバイルデバイスに関し、特に電池の持続時間についてシビアに扱っており、日常的に利用する上で不便がない、あるいは納得できる持続時間を求めている。携帯電話なら1日ちょっと、腕時計なら1週間が許容範囲というところだろう。もちろん、多いに越したことはないが、電池を増やせば重く大きくなる。特に腕時計のように身につけるモノであれば、身につけていて疲れてしまうほどの重さはいくら1カ月持続する電池を持っていたとしても認められないだろう。
先週の記事では、電池の持続性などに関する技術について紹介されている。ちなみにAppleが前回、腕に装着する時計のような使い方を認めたiPod nanoは105mAhだったが、音楽を聴いたり歩数計を使ったりしていても、せいぜい数日のバッテリ寿命だったため、これでは既存の腕時計を代替するデバイスとしては不十分だろう。
現在のiPod nanoは形も変わり、時計のアイデアは取り去られているが、Bluetoothを搭載し、iPhoneやiPad、PCなどとの連携手段として活用が見込まれている。このほかにも、電子ペーパーを搭載しスマートフォンと連携する時計「Pebble」も低電力Bluetoothが利用されている。
2013年に登場するとすれば、バッテリ技術に関して劇的な改善が見られるとは言えず、どの程度の利用時間と大きさ、重さでバランスを取るのかに注目していきたい。
「iWatch」とバッテリ持続時間--アップル製スマートウォッチ開発に伴う切実な問題(2月25日)Appleは先週、子どもによるアプリ内課金を巡り、原告となった親たちと和解に達した。日本において、ケータイからゲームを利用する子どものユーザーの課金が問題となっていたが、これに近い問題と言える。Appleは認定アプリのいずれかでゲーム内課金をした2300万人以上のiTunesアカウント保有者に通知を送ることが必要となるそうだ。
Appleにしても日本のモバイルゲームメーカーにしても、無料でアプリを提供し、アプリ内課金やゲーム内課金でユーザーに使ってもらうという方法が1つのビジネスモデルになっている。またダウンロードや課金の際にパスワード入力を省略したり、ワンクリックで課金ができるようにするなど、一般ユーザーの使い勝手を高めること(より課金プロセスを簡略化すること)と引き替えに、子どもが勝手に利用することを制限する方法が弱まっていると見ることができる。
課金制限をアカウントに設定したり、アクセスを制御するなど、日本でも親が子どものアクセスをコントロールする仕組みを各キャリアが導入しているが、GoogleやAppleもこうした取り組みをより強化し、分かりやすく説明していく必要があるだろう。
一方で、Appleは大学の授業コンテンツなどを無料で配信するiTunes Uでダウンロード数が10億件を突破したと発表した。iTunes UはiPhoneやiPadで独立したアプリとして提供されており、iBooksで公開される教材やアプリと授業コンテンツをまとめて学習体験を向上させる取り組みを行っている。
この取り組みは学生に対して無料で自由な学びのコンテンツへのアクセスが可能になるだけでなく、教育を提供する学校や教員への世界中からのフィードバックも生まれているという。
アップル、子どもによるアプリ内課金をめぐる訴訟で親たちと和解(2月26日)Appleは2月27日に、クパティーノの本社で株主総会を開いた。この中でのトピックとして、故Steve Jobs氏考案の宇宙船型新社屋を2016年にオープンさせる予定であることを発表している。現在Appleのキャンパスはクパティーノ市周辺の本社とその周辺に拡がっており、スペース不足が指摘されてきた。
2011年に立てられた計画は約26万平方メートルの敷地に4階建ての円形の建物として建設され、現在の本社の収容人数2800人に対し、1万2000人を収容する施設にする計画だった。計画は2012年に改訂され、収容人数を1万4200人へと大幅に増加させている。環境アセスメントにも積極的に取り組み、7000本もの植樹も行う予定だという。
また、今回の株主総会では、Greenlight Capitalからの株主訴訟を抱えており、裁判所はGreenlightの訴えを認めている。「抱き合わせ議案」を株主総会で決議しないようにすること求めたものであり、Appleは株主総会の議案から削除することになった。これを受けてGreenlight Capitalは「Appleが株主総会の議案から抱き合わせ提案を除外したことから、問題は解決した」として訴えを取り下げた。
ただ、昨今のApple株主にとっての関心事は、株価の低迷だ。Apple CEOのTim Cook氏も「失望している」と述べる一方で、Appleが保有する現金を株主に還元する考えなどは示さなかったという。「今後素晴らしい製品が登場するはずだ」との考えを示し、Appleの株主への還元は製品とそれが作り出すビジネスによって返していくという姿勢を強調するものとなった。
かねてより指摘しているが、Appleは公開企業であるが、会社と株主、ユーザー、そしてAppleのエコシステムに参加する開発者などとともに、新しい会社像を造るかもしれない、と筆者は考えている。既存企業が気を遣い、また意志決定に強く影響を及ぼしてきた株主の影響力が弱まるかもしれず抵抗は少なからずあると思うし、時間はかかりそうだが、製品だけでなく企業の経営の姿という視点からも、Appleに注目してみたい。
ジョブズ氏考案の宇宙船型アップル新社屋、2016年にオープン予定--クックCEOが発言(2月28日)Appleの製品コンセプトを手がけたFrog DesignのHartmut Esslinger氏の著書「Design Forward」で、Appleがどのようにして製品を世に送り出す仕組みを作るか、についてAppleとの協力関係を書いている。なかでもSteve Jobs氏に助言をしたというストーリーが興味深い。
Appleにはソニーやキヤノンのようなエンジニアリング力はないが、開発パートナーを利用すればそれが補えるとしている。またJobs氏直属のデザインチームの必要性と、製品開発よりはるかに前からデザインに取り組むべきというアドバイスは、Jobs氏が現在までのAppleできちんと実行してきた結果だった。
特に、記事の最後の写真の「Baby Mac」は、初代はおろか、現在のiMacすら想起させるデザインとなっており、Appleが1980年代の「未来」のデザインを着実にものにしてきた様子をうかがい知ることができる。
1980年代のアップル製品コンセプト--Frog Designのエスリンガー氏著書より(3月2日)Appleが抱えている裁判関連の話題の中で、少し意外だったのが、英国で「iPadほどクールではないからGalaxy Tabは模倣していない」と謝罪文の掲載を命じた判事が、現在は別の裁判の案件でSamsungの法律顧問に就いていたという事実だった。この判決からわずか4カ月でSamsungに雇われていた。
Appleのデザインや意匠に対する侵害の訴えに対し、Samsungは通信に関する特許侵害で互いに訴えを起こしているが、東京で2月28日、Samsungがデータ転送に関する特許侵害でAppleデバイスの販売差し止めを求めていた裁判で、東京地方裁判所はSamsungの訴えを退けている。
米国では、8月に出たSamsungに対する10億5000万ドルの損害賠償請求のうち、4億5050万ドルに対して「陪審側の損害賠償金額に対して合理的に計算できない」として、再計算を行う必要があると述べている。
米連邦地裁、対アップル特許侵害訴訟でVirnetX有利の判断を支持(2月28日)CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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