世界最大の家電イベント

「我々のDNAはどこにあるのか」:北米市場で新イメージ狙うパナソニック

 パナソニックは、北米市場で新たなイメージを打ち出そうとしている。その片鱗が米ラスベガスで開催中の2013 International CESで見られている。

 イベント開催初日に、同社社長として初めて基調講演に臨んだパナソニックの津賀一宏氏は冒頭、「パナソニックと聞くと、テレビのマニュファクチュアリングカンパニーだとイメージする人が多いだろう。しかし、目指しているのは『エコ・エンジニアリング・カンパニー』。多くの人が、パナソニックが事業をやっているとは思っていない領域において、生活向上に貢献している事実を紹介する」と切り出した。


パナソニック社長の津賀一宏氏

 津賀氏が指摘するように、北米市場でパナソニックはテレビメーカーのイメージが強い。講演後に津賀氏は「パナソニックはテレビメーカーであり、そのテレビ事業が不振であるために、パナソニックが苦しんでいるという単純な構図で見られている。何がパナソニックなのか。本当の姿はこれであるということを正しく伝えたかった」と語った。

 もちろん、2期連続の大幅な赤字の元凶がテレビ事業にあるのは明らかだ。しかし、パナソニックの事業は約50のビジネスユニット(BU)で構成されており、テレビ事業はそのひとつにすぎない。

 「パナソニックは、ソニーとも、サムスンやLGとも事業構造が異なる。ミクロのBUの単位で戦うのではなく、その幅の広さを生かしたマクロで戦うことに意味がある」と津賀氏は続ける。実際、基調講演で紹介された内容は、日本のユーザーから見ても驚くようなものだったと言える。


基調講演でパナソニックについて語る津賀氏

 講演では、「Your TV」「Your HOME」「Your CAR」「Your BUSINESS」「Your JOURNEY」「Your COMMUNITY」という6つの観点で同社の取り組み、製品やサービス、そして技術を紹介する形で進められた。

 講演では、自動車メーカーであるGeneral MotorsやTesla Motors、トヨタ自動車などとのパートナーシップで自動車産業で重要な役割を果たしていること、United AirlinesやAir New Zealandに機内用エンターテインメント機器やネット接続サービスを提供していること、IBMとビッグデータを活用したサービスで提携していること、そして、ローソンやマクドナルドといった店舗システムでのトータルソリューションを提供していることなど、パナソニックが持つテレビや家電というイメージとはまったく異なる領域での話を展開していった。展示会場のパナソニックブースも、6つの観点で展示が行われており、基調講演の内容に沿った形にしていたのが印象的だ。

 CESはその名の通り、コンシューマエレクトロニクスのイベント。それでもパナソニックがBtoBの展示に力を割いていたのは、今回のCESを通じて、BtoBを軸としたパナソニックの本来の姿を示したいという同社の本気ぶりを示すものだと言える。実際、家電の売り上げ規模は全体の3分の1にとどまっている。

 「今こそ、パナソニックはどんな方向に行くのか、我々のDNAはどこにあり、強さの源泉はどこに作っていくのかということを基調講演を通じて、もう一度考え直し、社外に発信するいい機会となった。むしろ業績が悪いときにこそ、こういうことをしっかりやっていくことが必要である」と津賀氏は語る。その一方で「この内容を社外だけでなく、社内に対しても発信していく必要があり、その点でもいい機会だった捉えている」とも語った。

 津賀氏は2012年2月に社長就任の指名を受けて以降、全社を見る立場となったが、「役員の立場でもパナソニックという巨大な組織の全貌を知ることはできなかった」とかつての自らの立場を振り返る。そして、「今、わかりにくい組織を変えているところだ」とも語る。

  • 56型有機ELディスプレイ

 津賀氏が言うように、今回の基調講演を通じて、パナソニックが持つマクロの強みとミクロの強みに社内に対して改めて浸透させる狙いも重要な隠れた要素だったといえる。パナソニック電工、三洋電機の統合と再編を経た、この時期において、そうした訴求に最適なタイミングだったともいえよう。

 だが、今回の基調講演は、パナソニックによる「脱テレビ」を示すものではなかった。「テレビ事業が赤字だから、テレビをやめて、BtoBだけをやるというメッセージではない」と津賀氏は断言。「もしテレビをやめるのならば、56型の有機ELディスプレイは出さなかった」とする。

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