パナソニックは10月31日、2013年3月期第2四半期(2012年7~9月)の連結決算を発表した。売上高は1兆8237億円(前年同期比12%減)、営業利益は488億円(同16%増)となった。固定費の大幅削減により営業利益は確保したものの、薄型テレビ、BDレコーダーなどのデジタルコンシューマ製品の市況悪化、中国の不買運動などの影響を受け、売上は減少した。またのれん・無形資産の減損、繰延税金資産の取り崩しなどにより、税引前損失は3165億円、当期純損失は6980億円という、大幅な赤字となった。
これを受けパナソニックでは、通期の業績見通しを大幅に下方修正した。売上高は7兆3000億円(当初公表は8兆1000億円)、営業利益は1400億円(同2600億円)、税引前損失は3650億円(同1600億円の黒字)、当期純損失は7650億円(同500億円の黒字)と、2012年3月期に続き多額の損失計上となる。
代表取締役社長の津賀一宏氏は、現状の課題認識と今後の対応について説明した。「落ち込みの大部分を占める」としたデジタルコンシューマー関連は、商品ごとに市場要因とパナソニックの競争力要因の2つから説明。「薄型テレビ、BDレコーダーは日本市場の落ち込みが強く影響しているが、それ以外の商品は価格競争力の低下が主な要因になっている。この領域で負け組になっていると言わざるを得ない」と分析する。
この分野に多額の投資をしてきた背景を踏まえ、現状を「構造的課題を抱えている」と言う。「約20年低成長低収益の状態が続いた。ここから脱却するためにデジタル化における大規模投資に踏み切ったが、デジタル商品は急激にコモディティ化し、思っていたリターンが生めず減損に至っている。これは普通ではない状態であり、当社は普通の会社ではないとしっかりと自覚するところからスタートしなければならない」と続けた。
今後パナソニックが取り組むのは、デジタルコンシューマー関連事業のスリム化と構造転換だ。すでに構造改革に着手している薄型テレビ・パネル事業に関しては、液晶、プラズマともにスリム化と非テレビ化を推進。2012年度は液晶で50%超、プラズマで10%超まで非テレビ比率を上げる。
またチェコ、マレーシアの工場で生産を終了するなどスリム化も進んでおり、「薄型テレビ事業に関しては上期は黒字を確保。販売減があり目標には届かないが2012年度の営業利益は1100億円改善出来る見込みだ」と順調に転換していることをアピールした。
先日、欧州市場からの撤退を明らかにした携帯電話事業は、海外事業を見直し、体制のスリム化を図ることで「自前主義から脱却する」と新たな改革を打ち出す。
再参入後すぐの撤退となった欧州市場に関しては「ご迷惑をおかけしている。再参入を決定した時は商品がスマートフォンになり、グローバルでほぼ同等スペックの商品を作れるという思いがあった。しかし日本市場はやはり独自のスペックが必要で、それぞれ商品開発が必要になることがわかった。それが判明した段階で即座に手を打つという当たり前のことやっているだけ」と説明する。
一方、積極投資を続けてきた民生リチウム電池事業は、リソースを車載用へとシフト、ソーラー事業については「セル単品で勝負できる市場は限定されてきた。安定的に収益を生み出す戦略へと方向転換する」とし、システム・ソリューションで収益を追求する方針に変更する。
2013年4月からは、アプライアンス、エコソリューション、AVCネットワークス&システムズ、オートモーティブ&インダストリアルの4カンパニー制を導入し、非「デジタルコンシューマー」で新たな成長分野を構築していくとのこと。現在86あるビジネスユニットは56に再編される。
こうした構造改革、組織改編を実施し、全社目標を「毎年度フリー・キャッシュ・フロー2000億円以上」、「全ビジネスユニットで2015年度営業利益率5%以上」に据える。
同日の通期業績見直しを受け、2012年度の配当は無配を発表。「戦後の混乱期を除いて無配に転じたことはなく、なんとしても早期に業績を回復させ、安定した配当ができる姿へと戻していく」とした。
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