利用者の声を第一にするという「ユーザーファースト」を最重要キーワードとして掲げ、サービスの運営体制を見直すとしたミクシィ。このキーワードにのっとりユーザーとの交流を強化する一方、社内の体制も大きく変更させた。
8月以降、SNS「mixi」の機能ごとに開発チームを分けたユニット制を導入し、迅速にサービスを改善する仕組みを導入。さらには新規事業を束ねる「イノベーションセンター」を設置した。
すでにこのイノベーションセンターから、Android向けのテスト版アプリ配信サービス「DeployGate」、サブスクリプション型ファッションEC「Petite jeté」の2つのサービスが提供されている。
ミクシィがなぜこのタイミングで新規事業を手掛けるのか。そしてどういった体制を敷いているのか。ミクシィ イノベーションセンター長の石井瞬氏に聞いた。
実はミクシィは、mixi以外にもベンチャーとして結構いろんな事をやってきた会社なんです。求人サイトの「Find Job !」(現在はグループ会社のミクシィ・リクルートメントが運営)や、オークションサイトの「eHammer」(現在はサービスを終了)、プレスリリース配信サービスの「@Press」(2005年にネットエイジキャピタルパートナーズに売却。現在はソーシャルワイヤーが運営)があります。「4本サービスを出して、そのうち3本が当たる」というのは、成績のいい会社と言えます。
その後はmixiに事業を集中してきましたが、以前から「新しいことをやりたい」という声はありました。そこで受け皿を作るべく、6月頃から新規事業に関する制度を作りはじめ、8月に社内に告知しました。そして8月末から9月にかけてアイデアを募集したところ、7件のアイデアが集まりました。現在では毎月1日から15日にアイデアを募集し、事業化を検討するというスキームです。
「モノが作れるチームで(アイデアを)出して欲しい」と言っています。ミクシィ内の社内リソース、すなわち優秀なエンジニアを使い、顧客のニーズを問えるところまでチーム内で自ら作るということをお願いしています。
イノベーションセンターの機能は大きく3つです。1つは前述の通り、社内のメンバーを集め、低予算小チームでアイデアを事業化まで進める、というものです。
そして2つめは既存のmixiに関連するものです。8月からユニット制を導入していますが、プロダクトの中には専任の担当がついていないものがあります。それに対する提案や、新しい機能などを作るといったものです。
3つめはトップダウン型のものです。経営陣からの「お題」ありきで進めていくというものです。
DeployGateは1つめに当たります。弊社ではAndroidアプリも作っていますが、そのテストに実際に使っていた社内ツールの評価が非常に高いものでした。そのツールがベースになっています。
DeployGateは公開から3カ月で1000以上のAndroidアプリの開発に利用されました。英語版も提供しているため、すでに世界50カ国で利用されています。英語版の利用割合は全体の約30%です。無料プランやライトプランを選んだユーザーが上位の課金プランに変更してくれるというケースも増えています。
開発チームは2人のエンジニアだけですが、現在は他の業務と兼務するのではなく、転籍の上、会議室の一室を専用オフィスにして開発を進めています。
一方のPetite jetéは3つめに当たります。経営陣から提案された「サブスクリプション型EC」というテーマでサービスを企画しています。フルコミットしているメンバーは3人で、デザイナーとのやりとりから布の買い付け、製造、梱包に発送まで、サブスクリプションの始めから終わりまでを手掛けています。まったくノウハウのない中、半年弱でオペレーションを回しきっているのはすごいと思います。
まだベータ版という位置づけですし、サブスクリプションコマース自体が立ち上がり始めたところなので、「今すぐ収益になるか」という話になると、先になるのではないかと思いますが、トレンドの波には乗れているのでないでしょうか。サービスは春ごろを目処に本格化させていきます。
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