Jobs氏の交渉のスタイルはCue氏とはかなり違っていたと、音楽業界で働く弁護士のCastle氏は語る。「稚拙な考えの持ち主だとJobs氏に言われるまでは、生きていることにもならない」とCastle氏は言う。Jobs氏は、自分の部下にも手加減はしなかった。しかし、Warner Musicの元幹部で、iTunesと最初の契約をまとめる役割を果たしたPaul Vidich氏は、Jobs氏と働くにはぴったりの性格の人物としてCue氏のことを記憶している。
「Steveとうまくやっていくつもりなら、酸素が欲しくてもそれを競い合ってはいけない。Steveが思い通りに振る舞うことができ、彼が望み通りに一層輝けるようにしてやる必要がある。Eddyはそういう穏やかな物腰だった。彼は決して誰かに『おい、こっちを見ろ』などと言ったりはしなかった。彼は本当にうまくやっていた」(Vidich氏)
かつてCue氏と交渉を行ったことのある幹部は、「Eddyは、スポットライトを浴びたがる派手な幹部のような人々のことは気に留めていなかった。彼はエンジンルームにいて、すべてがきちんと動くようにしていれば幸せというタイプの人物だ」と語る。
Jobs氏がCue氏を信頼して、傾いた事業の大がかりな復旧作業を任せていたことは間違いない。Jobs氏は2008年、スタート直後に数多くの不具合に直面し、沈没しかかっていたオンラインサービスのMobileMeをCue氏に託した。2011年10月、MobileMeはiCloudに衣替えした。Appleは2012年7月に、iCloudのユーザー数が1億5000万人に達したと発表している。
Cue氏がAppleのコンテンツビジネスを1人で率いることになった今、同氏を知る人々は、iTunesにアプリやエンターテインメントコンテンツを豊富に取りそろえておくのに十分なほど、同氏はタフで賢明だと述べる。
ある音楽ベンダーは「彼は、iTunes Store経由で販売活動を行いたい人々に対して持っている自分の力、そして、レコード会社に対して自分が持っている力を分かっている」と語る。この人物は、iTunesでのアプリ提供に対してAppleが要求している30%の手数料の値下げを、Cue氏に求めた時のことを覚えている。Cue氏は文字通り椅子にどっかりと腰を下ろすと、テーブルに足を投げ出した。「Appleは良いところだ。ただ、誰かの足と交渉するのは難しい」とこの人物は語る。
最終的にこのベンダーは、希望していた契約を結ばなかった。
Vidich氏は、Cue氏はJobs氏なしにiTunesを率いるだけのスキルを身につけており、既にできあがったサービスを監督することから益を得ると断言している。
「わたしは(Cue氏と)その思慮深く、穏やかな物腰を心から尊敬していた。テクノロジ業界の多くの人々とは違って、彼は契約交渉の席でわれわれの話に耳を傾けてくれた。ライセンスについての議論では、彼はSteveの陰に隠れていた。しかし本当のところは、過去5年をかけて今の地位へとたどり着いたのだ」(Vidich氏)
Appleが繁栄し続けるためには、Cue氏は成長と交渉を続けなければならない。そして何よりも、自らが受け継いだ問題を解決することが求められている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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