ブラウザ市場に革命を起こした「Firefox」のMozillaの挑戦は続いている。オープンソースを愛する開発者が中心の非営利団体Mozilla Foundationは「Internet Explorer(IE)」の独占状態を崩し、オープンなウェブにとって重要な旗振り役となった。
そのMozillaの最新のミッションはモバイル。新しいモバイルOSで、閉鎖的なモバイルにウェブのパワーをもたらすと意気込む。アイルランド・ダブリンで開催された「Web Summit 2012」で10月18日、Mozilla Corporationの最高経営責任者(CEO)であるGary Kovacs氏が対談形式でMozillaの今、そしてこれからを語った。
対談相手を務めたWiredの欧州担当編集者David Rowan氏は、まずビジネスモデルについて鋭く切り込んだ。
MozillaはGoogleと、Firefoxが統合する検索エンジンで契約しており、これがMozillaにとって大部分の収益となっている。2011年にGoogleとの契約終了の際にGoogle依存のリスクが取りざたされた。
「営利目的ではないが、プロジェクトを運営していくための売り上げは追求している」とKovacs氏はMozillaの立場を説明する。2011年末にGoogleとの契約更新が明らかにされたとき、契約金額は3年で10億ドルと報じられたことにRowan氏が触れると、Kovacs氏はRowan氏が指摘した金額を肯定も否定もせず、Googleは数ある契約の中の1社であり、Bing(Microsoft)、中国ではBaidu、ロシアではYandexなどと提携していると返した。
だが、Googleは「Chrome」でブラウザ市場に進出、その後着実にシェアを伸ばしFirefoxと競合している。Googleとの関係については、「フレナミー(“Friend(友達)”と“Enermy(敵)”を合わせた言葉)だ」と述べる。「Googleは巨大企業で、すべての面を考慮すると純粋な友達にはなりえない。協業することもあれば、積極的に戦うところもある。これが現在の状況だ」(Kovacs氏)
売り上げの多くを占める企業と競合関係にあるが、これを「危険と感じないか」という問いについて、Kovacs氏は「われわれがブラウザでユーザーに価値をもたらしていないとすれば、危ない。だが、Mozillaの価値を理解するすばらしいユーザーをGoogle検索に送っており、これが売り上げをもたらしている」と説明。「Mozillaのミッションはオープンなウェブと選択肢の提供であって、収益を目的としているのではない。誰と契約しようと、これまでのモデルを継続できる自信がある」
Googleからの3年10億ドル(推定)をはじめ、売り上げの行く先は、ウェブの開発だ。Mozilla内でさまざまなプロジェクトを通じて取り組んでおり、ウェブへの投資はこの2年で4倍に増えたという。
中でも現在フォーカスしているのがモバイルだ。Mozillaは2011年に「Boot to Gecko」というHTML5ベースのモバイルOSプロジェクトを発表、2012年の「Mobile World Congress 2012」ではプロトタイプが動く端末をデモしている。その後、名称を「Firefox OS」にし、中国のZTE、TCL Communication Technologyという端末メーカー2社との提携を発表、2013年初めにブラジルなどでローンチする計画を発表している。
モバイルOSを開発する背景について、Kovacs氏は「ウェブが脅威にある」と説明する。デスクトップからモバイルにウェブが移行しつつあるが、プラットフォームはAppleの「iOS」とGoogleの「Android」が独占している。「ウェブは外部からのイノベーションを飲み込みながら進化してきた。われわれは開発者、パートナー企業、誰もが経済に参加できるウェブベースのOSを提供する」とKovacs氏は説明する。Firefox OSはユーザーインターフェース(UI)からネイティブのデバイスドライバまですべてHTMLで書かれたOSで、あらゆるウェブアプリケーションが動くという。
「現実の世界で、2つのデパートでしかショッピングできないようなことは考えられない。Firefox OSによりモバイルのウェブを解き放つ」(Kovacs氏)
Kovacs氏がもうひとつ触れたのが途上国市場だ。新しいネットユーザーのほとんどが途上国から生まれる。安価な端末でウェブにアクセスして、便利な機能を使う端末向けとしてFirefox OSに需要があるとみる。
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