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プレステの成功は音楽業界の手法とバーチャファイター--SCE創業メンバーが語る - (page 2)

佐藤和也 (編集部)2012年09月10日 11時14分
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プレイステーションビジネスに風が吹いたのは「バーチャファイター」

 ゲーム機ビジネスに手を挙げたソニーだったが、当時の家電メーカーによるゲームハード進出はソニーが最初ではなかった。PCエンジン(NECホームエレクトロニクス)は一定の成功を収めたとしたが、やはり芳しくない状態となっていた。そしてソニーも同じ穴の狢だと思われていたという。当時セガに在籍していた黒川氏も「向こう見ずなチャレンジだと感じましたね」とコメント。実機を持ってゲームメーカーや関係各所にハードをプレゼンした際にも「素晴らしいマシンであることはわかった。でも、悪いことは言わないからやめておきなさいと言われ続けました」(赤川氏)。

 こうした冷ややかな目で見られていた状況であっても、結果としてプレイステーションには多数のソフトハウスが参入してラインナップが揃えられた。これについて黒川氏は「ここにいるみなさんが、音楽業界にいたことが大きい」とし、A&Rと呼ばれる、アーティストの発掘や育成、そして広げていく手法に秘密があったと分析。丸山氏は、音楽もゲームも物づくりに関わっている人が作るものだからとして「ソフトメーカーに対して偉そうな顔をしたら嫌われるし、そうしたらソフトを提供をしてもらえない。それがわかっているから、アプローチは注意深く丁寧に、相手に対する尊敬をきっちりとしていたのは事実だ」(丸山氏)。

赤川良二氏
赤川良二氏

 そしてもうひとつ、業界の大きな流れが2Dから3Dへの移行期になったこともポイントとして挙げられた。もっとも「今から歴史を振り返ればそうだった」(赤川氏)ことであって、当時プレゼンで各社をまわっていたときの反応は、家庭用ゲーム機での3Dゲームは時期早尚だと思われていた。プレイステーションはリアルタイムでの3D表現を家庭用のハードで実現することをウリとしていた。当時はアーケードゲームがポリゴン3Dゲームを作り出していた時期ではあるものの、それは高価でハイスペックな筐体でできたことで「家庭用ハードで3Dのゲームができるとも思わないし、普通のゲームメーカーはどうやって作ればいいかもわからない。さらにプレイステーションが売れるかどうかもわからないのに、会社として投資するのはいかがなものか、という意見が多かった」(赤川氏)ため、売り出す際には3Dマシンの看板を下ろして、2Dマシンにすることも考えられていたという。

 ここで風向きが変わるターニングポイントとなったのは、セガの3D対戦格闘ゲーム「バーチャファイター」の出現。赤川氏は「これがなかったら、違うマシンになっていた」と述べ、丸山氏も「プレゼンをしながらも、3Dでどのようなことができるか、そしてゲームをして落とし込むかのイメージは、私もほかの人もできていなかった。イメージできていたのは久夛良木さんだけだった」と語り、バーチャファイターによって社内外含めて理解が進んだという。当時はセガも自社ハード路線を採っていたが、皮肉にもバーチャファイターにより、ライバルとなるプレイステーションビジネスの方向性が明確になったと同時に、ソフトメーカーからのアプローチも一気に増えたと一様に語った。

 そしてプレイステーションの勢いをより加速させた出来事として挙げられたのは、プレイステーション本体と同時発売された、ナムコ(現バンダイナムコゲームス)の3Dレーシングゲーム「リッジレーサー」。同時発売のタイトル開発には、たとえば競合ソフトが少ない中での発売というメリットもあるが、どれだけ普及するかわからない状態での開発投資にはリスクが伴い、回収の見込みがない限り予算もかけられない。「300万台売れるということが無い限り、開発費が回収できないし、そうじゃければ開発できないと大手メーカーさんが至極もっともなことをおっしゃっていました。でも回収できるかどうか分からないのに、やってくれたのがナムコさん。ナムコさんがいなかったらプレイステーションはあそこまでのスタートを切れなかった」(丸山氏)。

 ちなみにそのリッジレーサーの出来について、黒川氏が「今だから話せること」として、こんなエピソードを語った。SCEの戦略発表会で披露された開発途中のリッジレーサーの映像を、とあるところから入手。セガは当時、バーチャファイターのセガサターン向けの移植を進めていたが、開発部署のAM2研にリッジレーサーの映像を見せたところ、開発者たちは「ここまで(アーケードのクオリティを)再現しているのか」と驚きを隠さなかった。そして開発の中心にいた鈴木裕氏も危機感を募らせ、バーチャファイターのさらなるクオリティアップを指示したという。

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