第1回はコンサルティング・セールスのプロセスを中心に全体像をご紹介しました。今回は、そのプロセスをお客様の心理的側面から見てみましょう。
コンサルティング・セールスは、潜在的なニーズを顕在化し、顧客を創り出すものです。そのため、初対面におけるお客様の心理には「不信」「不要」「不適」「不急」の4つの「不」が存在します。その4つの「不」を個別に見ていきましょう。
「お宅は信用できないよ」という壁です。人柄や態度、準備の程度などのことで、お客様が営業担当者を信用できなければ、その後にどんなに良い商品の説明をしても納得していただけることはないでしょう。最初の「不信の壁」を乗り越えなければ、奥座敷に進むことはあり得ません。不信の壁を乗り越えるために最も重要なことは、短時間ですばやく信頼を構築することです。身だしなみや言葉遣いはもちろんのこと、お客様の情報収集、お客様との共通点を探す、お客様を好きになることなどが大切です。
不信の壁を乗り越えて、営業担当者として信頼はしていただいても、ニーズ自体を創り出すコンサルティング・セールスでは、自社の商品は“お客様が求めているものではない”ケースも多く、困難です。これを不要の壁と言います。
たとえば、日ごろボールペンしか使わない人に、万年筆を無理に売るのは大変なことです。さまざまな角度から提案し、お客様も気付いていないソリューションを導き出さなければいけません。ボールペンしか使わない人でも、会社の重役の多くは万年筆を持っている、ということが分かったら、出世するためには万年筆の1本くらいは持っている必要があるな、と納得されるかもしれません。そうすれば、ステータスシンボルとしての必要性を創り出すことができるのです。
不信の壁、不要の壁を乗り越えてもまだまだハードルはあります。営業担当者が提案しているものが、お客様にとって「自分には適さない」という反論です。これを「不適の壁」と言います。
まずは、以下のやりとりをご覧ください。
営業(接客):それでは、この万年筆をお勧めいたします。スイス製で使いやすいですよ。1本5万円です。
お客様:ちょっと待ってください。万年筆は必要だといいましたが、輸入品を買うつもりはありません。国産の方がいいですよ。輸入品は高すぎますね。
このように万年筆を持つことの必要性は理解したが、営業担当者の勧める商品は自分の意図に適さないという壁です。ここでは、なぜ輸入品がよいのか、お客様の立場で考えて、より大きな出世のためにはそれに見合う高級品を持つ必要がある、これぐらいの商品が一番適しているのだと説得できなければいけません。
最後の壁です。せっかくここまで壁を乗り越えてきても、以下のような反応をするお客様は多いことでしょう。
お客様:たしかに輸入物の高級品がよいことは分かった。しかし、今すぐ必要なものではないし、手元に5万円もない。よく検討して、しっかりステータスを高めたいと思ったら、お金を貯めて買うことにするよ。それまで覚えておくから。
このようにうまくかわされて成約に至らなかったとしたら、次の営業機会はないと思われます。その場で気持ちが固まって決断をし、コミットしなければ、また別に買うべきものが出てきて永久に忘れさられてしまうことになるのです。しっかりとクロージングしなければいけません。
以上が「4つの不」です。初対面がいかに重要かは、営業担当者であれば日々感じているでしょうが、お客様の心理的側面からも乗り越えなければいけない壁があることをあらためてご確認いただけたのではないでしょうか。
次回は初対面の場面で悩む「導入トーク」についてご紹介します。
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