ピクサーの新しいシミュレーション技術--「メリダとおそろしの森」で目指したもの - (page 3)

Daniel Terdiman (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2012年07月14日 07時30分

 メリダが川を駆け抜けるときに上がる水しぶきを正確に表現するなど、さらなる視覚効果上の問題を制作チームが解決するときにも、新しいソフトウェアが役に立った。さらには、メリダが川に入った後、服が少しぬれて見えるようにするのにも効果を発揮した。

 Pixarは長年にわたって、水のシミュレーションに熱心に取り組んできた。そして「カーズ2」の海のシーンでは新しい境地を開いている。しかし、幅が40フィート(約12m)程度しかない川のシミュレーションを行う場合、問題は違ってくるとMay氏は言う。同氏によれば、川のシミュレーションを行うために制作チームは「われわれがウィンドウと呼ぶものを作り」、アニメーターが「水の一区画を囲み、その区画の中で相当細かなシミュレーションを行える」ようにしたという。

 こうした水のシミュレーションは非常に手間のかかるもので、そうしたシーンの水の形状を計算するのに何日もかかることもあったとMay氏は言う。

 しかしこのシミュレーションが必要であることに疑問の余地はなかった。この映画のほかの多くの技術的課題も同じだ。そして、May氏は今後取り組むべき課題が残されていることを認めてはいるものの(同氏は、例えば髪の1房ごとを、アニメーターがもっと思い通りにコントロールできるようにしたいと考えている)、こうした取り組みの成果は「メリダとおそろしの森」の映像の中で十分に発揮されている。

 Chung氏にとって(そしてPixarの多くの人にとって)、最も重要な役割はおそらく、同スタジオの作品の芸術面や技術面がその物語が持つレベルに匹敵するように取り組むことだろう。テクノロジによって、Pixarは最終的にその点に到達しつつあるとChung氏は語る。「Pixarでは、物事を安っぽいものにするような妥協は決してしない。素晴らしい映画を作り、芸術的であるために全員が関わっているのが理想だ」(Chung氏)

 それはつまり、映画の制作者たちがアニメーターや技術チームに対して、新しい問題に対処するよう何度も求めたことを意味する。そのほとんどは彼ら自身の満足のためだ。

 Chung氏は「映画の終わりになると、ほとんど冗談のような状況だった」と言う。「(監督は)われわれが今まで見たことのない、また別の(スタイリングの指示を)しようとした。われわれはあきれたような顔をしてみせて『多分できると思う』と言ったが、内心ではみんな興奮していた。もう一仕事できるからだ」(Chung氏)

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]