サンフランシスコ発--始まりは1つのツールバーだった。すなわち、便利なGoogle検索ボックスをブラウザに提供するアドオンに過ぎなかった。
その控えめなプロジェクトは、最終的に「Google Chrome」となった。Googleの集計によると、Chromeは現在、3億1000万人のユーザーに利用されているという。それにより、同プロジェクトのリーダーだったSundar Pichai氏は、Chromeおよびアプリケーション担当シニアバイスプレジデントに昇進した。そしてそれは、同社にとって大きな利益をもたらす新たな源となった。
Chromeは一般に公開されてからの3年半の間に、着実に普及を広げている。「Windows」で最初に公開されてから数カ月後には、「OS X」とLinux PCにも拡大された。そして、米国時間6月28日に「Android」でのベータテスト段階を完了し、29日には「iOS」向けにも登場した。ChromeはGoogleへの検索広告掲載を促進したり、また、それほど直接的ではないが「Google Docs」のようなオンラインサービスの有効化を支援したりすることで、Googleに売り上げをもたらしている。
Googleの収益にとって特に都合の良いChromeの特徴は、「Safari」や「Firefox」から実行される検索と違って、Chromeの検索はより大きな利益をもたらすということだ。なぜなら、Googleはトラフィック獲得コスト(TAC)と呼ばれるものを通して検索売上高の一部を分け合う必要がないからだ。ただしPichai氏は、GoogleがiOS版ChromeによってAppleにTACを支払わなければならないのか、ということについてはコメントしなかった。
しかしPichai氏は、Chromeに関連するそのほかの問題について、当地開催のGoogle I/OショーでStephen Shankland記者に語った。以下の記事は、そのインタビューを編集したものだ。
--まずは全体像から伺います。なぜChromeを構築したのですか。最初の発表以来、Googleの動機に変化はありましたか。
Pichai氏:そもそもは、Googleがウェブを基盤に構築されている、ということに端を発していました。われわれはウェブから多くの恩恵を受けていました。Google検索は重要であり、ウェブにおいて今までで最も重要なアプリケーションの1つでした。人々はブラウザを通してあらゆるものにアクセスしていました。そして、そこに選択肢を持つことは、われわれにとって重要でした。
われわれが(ウェブ)アプリの記述に着手した2004年の話をしましょう。「Gmail」が登場し、「Google Maps」が登場しました。われわれがアプリケーションを本当に牽引するためには、その基盤となる素晴らしいプラットフォーム、そして、ある場合には基盤となるハードウェアとの深い部分での統合が必要だ、ということに気づきました。われわれにとって、その基盤となるプラットフォームはブラウザでした。そして、そこで発言権を持つことは極めて重要でした。われわれは「Gears」に取り組んでおり、これに影響を及ぼすはるかに強力な手段はブラウザを開発することだと悟りました。
Chromeという旅を続ける中で、それはより大きな意味を持つようになった、と私は考えています。ユーザーはオンラインやクラウド上にいますが、扱わなければならないデバイスの数がとても多くなっています。われわれが取り組んでいるChromeとクラウドアプリはいずれも、それを結びつけて、ユーザーがシームレスなオンライン体験を持てるように助けます。Chromeはそこで途方もなく大きな役割を果たします。Chromeは、あらゆるプラットフォームで動作するように設計された数少ない製品の1つです。開発者の立場から言うと、一度だけ記述して、インストールベース全体に展開することが可能なブラウザベースアプリへのショートカットをユーザーに提供できます。
--厳密に言うと、あらゆるところというわけではありませんよね。最先端の新ブラウザでさえ、それぞれ異なる機能をサポートしています。また、いまだに「Internet Explorer 6(IE6)」を利用している人が大勢います。モバイルブラウザはデスクトップブラウザと異なります。ウェブ上の断片化は、どれほど深刻な状況なのでしょうか。
Pichai氏:モバイルウェブは、ようやく始まった段階です。Android版Chromeは「Nexus 7」で初めてデフォルトとして出荷されました。そしてわれわれは29日、iOS版Chromeを発表しました。モバイルウェブでの革新は今始まろうとしているところだと私は思います。APIに関してさまざまな進化が起きるとわれわれは予測しています。私は非常に楽観的な見方をしています。
断片化については、好意的な見方と否定的な見方があり、私はその両方の主張が正しいと考えます。断片化がわれわれに全く弊害を及ぼしていないと考えられる使用事例は数多くあります。優れた企業は、素晴らしいアプリを提供するためにあらゆる手段を講じ、ためらうことなくさまざまな機能を追加します。企業に関して言えば、IE6とIE7のためにとりわけ厄介な事態になっています。そこでは、断片化がわれわれに及ぼす弊害が大きくなります。
しかし、ハイエンドにおいては、断片化はわれわれに全く悪影響を及ぼさないと私は考えます。多くの企業は、Chrome拡張を急いで作り出し、それについて深く考えてはいません。
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