今、何が起きているのかというと、Microsoftはこの新しい世界を全く新しいレンズを通して見ようとしているのである。そして見えるものの多くは同社にとって不本意なものだ。世界は目まぐるしく変化しているが、同社の既存のパートナー企業は動きが遅すぎるし、付加価値が少なすぎる。そうしたパートナー企業は、Microsoftにとっての成功への道に置かれたスピードバンプと化している。
ポストPC時代にあっても、顧客と密接な関係を築くことは何よりも重要だ。それは、優れたカスタマーエクスペリエンスを実現する唯一の方法である。Appleが実際に示してきた通り、カスタマーエクスペリエンスは大きな競争上の優位性となる。
Appleはこれを実現するために、シームレスに統合したハードウェアとソフトウェアを設計するとともに、販売、流通、アフターサービス、サポート、さらにはパートナーの通信事業者まで含めた、Appleのエコシステム全体を厳しくコントロールしている。対照的に、Microsoftはこれまで、ハードウェアベンダーに自社のソフトウェアのライセンスを供与し、製品と消費者のエクスペリエンスはそれほど厳しくコントロールしないという戦略を進めてきた。
新しいMicrosoftの戦略を後押ししている要素はもう1つある。エコシステムを保有することは、Microsoftがデスクトップ市場で享受している、独占的な利益を守るのに最善の方法だということだ。エコシステムを保有することで顧客側にもたらされるメリットが、優れたユーザーエクスペリエンスの提供だとすれば、ベンダー側のメリットは、顧客の囲い込みができることである。Appleの洗練されたデザインや、相互運用性、素晴らしいアプリやコンテンツ、そして非常に忠誠心の高い顧客に接したければ、Appleを通してそうする以外に選択の余地はない。見返りとしてAppleは、そのハードウェアを流れていくあらゆるものを手に取ることができる。
そのためMicrosoftは今後、Lenovo、Acer、Dell、HPといった、同社の長年にわたるOEMハードウェアパートナーと、顧客をめぐって公然と競争することになる可能性がある。それはOEM企業にとってはすぐに悪い知らせとなる。そしてこれは始まりに過ぎない。
Microsoftは、代理店や再販業者をなくす取り組みも開始するかもしれない。まずは代理店だ。現在代理店が提供しているもの(複数ベンダー向けの時間と場所、在庫、そしてクレジット販売など)は価値が低く、利益の小さいサービスで、Microsoftでも簡単に同じことができるため、同社はそうするつもりではないだろうか。Microsoftが再販業者の小売店舗や、カスタマーリレーションシップ、より価値の高いサービスなどを補完するには数年かかるが、それも実施されると思われる。
Microsoftがこうしたことを成功させられるかどうかは分からない。IBMがコモディティハードウェアから企業向けサービスへ移行して以来、あるいはGeneral Electric(GE)が電球事業にピリオドを打ち、航空宇宙産業やほかのハイテク分野での飛躍的な進歩を選んで以来、これほどの規模のビジネス移行に成功した企業を、筆者は見たことがない。それほど大がかりなことなのだ。
しかし見誤ってはならないのは、Microsoftがその相当な規模のリソースを、ポストPC時代を勝ち抜くための長期的戦略に集中させている中では、Microsoftのパートナー企業が受ける影響は、甚大かつ急速なものになるだろうということだ。
Marty Wolf氏はmartinwolfの創設者兼プレジデントで、ミドルマーケットを対象とするIT分野のM&Aの専門家だ。Martin Wolf M&A AdvisorsはMicrosoftと意見を交換したことがあり、過去に同社のパートナー企業を担当したことがあるが、現在は積極的な関与を行っていない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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