米PinterestのBusiness Specialistで国際化を担当するSarah Tavel氏は、7月4日に開催された「楽天市場」の出店店舗向けイベント「楽天EXPO 2012」で、「The Pinterest Design Story」と題する講演で登壇し、SNS「Pinterest」の開発秘話や店舗向けのメリットなどを紹介した。
なお、同イベントでは、楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏による講演も行われている。
Pinterestは、ネット上の画像を収集して友人と共有できるサービスで、スクラップブックのような感覚で、簡単におしゃれな画像を共有できるのが特徴。トップページには自身やフォローした友人が投稿した写真が一覧で表示される。2012年1月時点のユーザー数は1170万人にのぼる。
現在、Pinterestは日本語には未対応だが、日本でのサービス展開に向けた取り組みが進められているという。楽天は5月17日に、複数の投資会社とともに同社に出資しており、7月4日には各サイトに「Pin It」ボタンを設置している。
自分のコレクションをネット上に収集し、それらを閲覧することでインスピレーションを得られるサービスとして、2010年3月に公開されたPinterest。コンセプトは、好きな写真やイラストなどを自由に貼り付けられる「ピンボード」からヒントを得ており、特に「ビジュアル的であること」と「柔軟性が高いこと」を重視しているという。
Tavel氏は、Pinterestについて「考え方は自分の大好きなものをピンして貼ること。すなわち、自分のインスピレーションのもととなるものを見つけ出して、自己表現をすることで、自分がどのような人間なのかを表せる場所」と説明し、Pinterestを“自分のためだけの美しいカタログ”と表現する。
サービス立ち上げの際に、最もこだわったのはサイトのレイアウトだったという。Pinterestの創設メンバーの1人であるデザイナーのEvan Sharp氏は、数カ月かけて50通りものバージョンを試し、デザインを現在の列を固定したレイアウトに決めたそうだ。「どうやってこの構成を最適化し、閲覧しやすいものにするかということに集中した」(Tavel氏)
Pinterestでは、投稿された画像にURLなどのソース情報が付与されている。たとえば、投稿された洋服に関する写真の中から気になったものをクリックすると、拡大画像が表示され、さらにその画像をクリックすると、選んだ洋服のブランドサイトなどにアクセスできる。サイトによってはそのまま商品を購入することもできる。
Tavel氏は「これはPinterest以外のサイトで物を発見するのとは随分違う経験」と語り、テキストではなくビジュアルでサイトを構成することで、自分がほしいものを見つけるきっかけをユーザーに与えることができると説明。オンラインでのコマースもオフラインの世界により近いものであるべきだと語る。
「自分がほしいものが分からない段階では(ウェブ)検索はできない。ユーザーはまずインスピレーションを求める。洋服店に行って、そこでパンツを買いたいと思っても、いつも履くものでなければ何をベースに検索すればいいかわからない。店内を見て回って、いろいろな商品を見て、試着をしてという中でやっと発見できる。それがオフラインの発見。Pinterestの根底にはその考え方がある」(Tavel氏)
また、Tavel氏は店舗側のメリットとして、Pinterestを利用することで「まったく新しい顧客とのつながり方ができるようになる」と語る。Tavel氏はオフラインならではの買い物の楽しみ方として、商品の包み紙や店員のおもてなしなども含めた“経験”を挙げ、「Pinterestはそういった体験が可能になるツール」と説明する。
たとえば、イタリアのファッションブランドであるGucciはPinterest上で、同社がイタリアと強いつながりがあるということを示すために、イタリアに関連した画像のみのピンボードを設けている。また、著名人がGucciの洋服を着ている画像のピンボードなども展開している。
「これによって憧れの的としてのGucciをあらわしたい。顧客にとってGucciというのはラグジュアリーブランドなんだと。Gucciが好きな人は、セレブがGucciの洋服を着ている様子を見て、いろいろなインスピレーションを得ることができる。そしてGucciのブランドを体験することができる」(Tavel氏)
Tavel氏は最後に、「ウェブは将来、よりビジュアルなものになり、よりオフラインの世界に近づいていく。消費者はますますイメージを使ったインスピレーションを与えるようなサイトへアクセスするようになる」と語り、Pinterestとして美しいデザインを追求するとともに、機能面もさらに充実させていきたいとした。
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