Pinterestへの出資やカナダKoboの同社を通じた電子書籍事業への参入など、その動向に注目が集まる楽天。同社は7月4日、自社ユーザー向けイベント「楽天 EXPO 2012 〜Beautiful〜」を東京にて開催した。イベントに登壇した楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、「Beautiful」をテーマに今後の取り組みについて語った。
なお、同イベントでは、米PinterestのBusiness SpecialistであるSarah Tavel氏による講演も行われている。
7月4日には、楽天市場との連携強化が発表されたPinterest。楽天が同社への出資について明らかにしたのは5月。三木谷氏は「名だたる投資家らが出資しようとしたができなかったところで、楽天がリードインベスターとして出資し、米国ではSplash(衝撃)が起きた」と振り返る。
三木谷氏は、ECが第1フェーズから第2フェーズに移行しつつあると語る。そしてその第2フェーズの1つの要素が「Discovery Shopping」であると説明する。これまでのECは、ユーザーが欲しい商品について検索し、価格比較を比較して購入するというものだった。言い換えれば、店舗側はテキストをもとにして、ニーズのある人にいかに買ってもらうかを考えることが重要だった。しかし、これからはソーシャルメディアなどを通じてユーザーがいいと思う商品を見つけ、それに対してアクションを行うことで、購買意欲がわき、需要が生まれるのだという。
このような新しいECの世界でこそ、Pinterestのようなサービスとの連携に意味があるという。FacebookやTwitterなどを含めたこれまでのSNSは、人と人をつなぐ、知り合いをコネクトするためのサービスである一方、Pinterestは画像でユーザーの興味をつないでいくサービスだ。好みの画像を「Pin It」(Pinterestに画像を収集、共有すること)することで、「ニーズやウォンツを作ることができる」(三木谷氏)という。
Pinterestと楽天市場の連携が進むことも踏まえて、今後重要になってくるのはビジュアルイメージの美しさだ。三木谷氏は、楽天市場で食品を販売する際、写真をより魅力的なものにするだけで、コンバージョンレートが3倍になったという事例を紹介。楽天市場内に商品紹介の動画をアップロードしたところ、平均コンバージョンレートが5.0%から7.7%まで増えたケースもあるという。「何を売るか、いくらで売るかも大切だが、以下にクオリティの高いビジュアルイメージでウォンツ、ニーズを喚起させるかも重要」(三木谷氏)
また、どのようなビジュアルに対してユーザーが反応するのかを分析すべく、同社でも専門チームを設立したことを明らかにした。今後はビジュアルイメージの重要性について、チームでの調査を楽天市場の出店者にシェアしていくという。
三木谷氏がもう1つキーワードとして掲げたのが「Personalization」だ。これまでのECはさまざまなユーザーに同じメールを送り、購入意欲の喚起に努めてきた。しかし、これがよりパーソナライズされていくという。楽天市場でも、店舗側がパーソナライゼーションに対応できるような機能を今後導入していくと説明した。
また、デバイスの変化もECの状況を変える要素の1つだ。三木谷氏は2015年にはスマートフォンが3500万台、タブレットが800万台、スマートテレビが500万台普及するという調査データを示した上で、現状楽天市場全体の11%程度であるスマートフォンでの流通(フィーチャーフォンをあわせて22%程度)が、3年以内に50%まで拡大すると予測。出店者に対して、モバイルへの対応を求めた。
Koboによる電子書籍事業については、先日サービスインを発表したばかりだが、今後は楽天市場との連携を強化するという。
7月からKoboが国内で展開するのは、E Inkを採用した端末「Kobo Touch」のみ。だが同社では、すでに海外でAndroidベースの「Kobo Vox」を展開している。国内でも今後このKobo Voxの最新版を展開する予定があるという。三木谷氏は発売時期などは明言しなかったが、「値段も操作性もデザインも非常にいい」と説明。またここには楽天市場でのショッピングに向けた専用アプリを搭載することで、両者の連携を図るとした。
ネットスーパーの台頭を背景に、ECの存在が「これまで通信販売の延長線上にあったが、リアルに近づき、さらにそれを超えて普段使うものを買うようになってきた」と説明する三木谷氏。
楽天市場でも、注文した商品を同日中に配送する「きょう楽」や翌日配送する「あす楽」を展開しているが、今後はさらに物流面での強化をしていくという。「足回りもスピーディーで正確。コストも安い物流を実現していきたい」(三木谷氏)
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