ゲーミフィケーションは「おもてなし」--ソーシャルゲーム第一人者が語る - (page 3)

「おもてなし」という、相手の気持ちになって考えること

 ソーシャルゲームの海外展開や、ゲーム全般としての日本と海外の違いについても話が及んだ。まず岡本氏は住環境による違いを挙げた。「日本はPSPやDSで電車や家でも遊ぶ感じですが、アメリカはリビングで据え置きのゲームを遊ぶユーザーが圧倒的に多く、ひとつのハードに対して購入するソフトも、日本の2倍から3倍は買う」という。また迫力のあるゲームを求めるユーザーが一定の層があるとし、まだ見えない部分があるとしながらも、グラフィックは日本以上に求められるとした。

 國光氏は本質は変わらないとしながらも、大きな違いは最初に遊んだゲームや、触れたエンタテイメントが何か、そして最初に慣れていると感じたものを使い続けるところだとした。国の違いは文化の違いではあるが、大分フラットな状態になってきていると語った。「日本型のゲームがたくさん出て行って、アメリカ人が最初に触れるソーシャルゲームが日本製のものになってくると、それがスタンダードになる可能性はあります」という。

 また海外の開発チームと一緒に働いた際、日本の開発について驚かれた点に、運営のマメさを挙げた。海外では大型アップデートを月に数回やるのに対して、日本は一日数回細かくやっていくのが違いとしてあるという。そしてソーシャルゲームを作ってない人から見た「全部同じゲームに見える」という声に対しては「それはそうだ」という。「でも今あるMMORPGやオンラインゲームも見た目は違いますけど全く一緒だと思います。そこでどういう敵を出し、イベントを仕掛けコミュニティを作っていくか…というところでゲームが変わっていく」とした。そしてソーシャルゲームの本質として「モチベーションを持たせて毎日アクセスしてもらって楽しんでもらう運用部分がポイントなんです。その運用部分は国による違いは出ないと思います」とした。

 そして「相手の気持ちになって考える」ということをよく社内で言っているとした。そしてデータそのものは深くチェックするけど、データが答えを出してくれるわけではなく、どうしたらユーザーが喜んでくれるかを考えて施策を取って、その反応をチェックするというアナログ的なことも必要で、そこがゲーミフィケーションの大きなところかつ、日本の強みとした。

 田中氏は英国法人の立ち上げのほか、海外での開発環境について、そもそも国によって勤務時間が法律できっちりと決められているなど、働き方が違うという。そして決定的に違う点として、日本では数時間に一回のアップデートを行ったり、データをチェックしながら改善していくという方法を取るが、それをそのままヨーロッパではできないとした。「彼らのプロダクトを作っていく仕組みが、合理的なんです。日本では作りながら変えていくことをするが、ヨーロッパではここまで作ると決めないと作れないところがある」という。

 海外展開においては田中氏は中東地域に興味を持っているという。宗教の問題はあるが、人の多さだけではなく、人々に活気があることや何かに飢えている感覚があるとした。「日本に帰国して、みんな疲れてる感じに見えたんです。向こうは夜でもアクティブに遊んでいます。そんなパワーのある人たちが、この先スマートフォンを持ち出してゲームをやり始めるということを考えたら、すごいビジネスチャンスがあると思うんです」と語った。

 ここで岡村氏からチュートリアルの重要性について聞かれた岡本氏は、無料で遊べるものが多いのですぐやめてしまうものであり、そのあたりはすごく丁寧に作っているという。「コンシューマゲームは5000円前後するもので、5分でやめる人はまずいないし、そこに甘えている部分もあるが、ついてきてくれる人はいます。だからチュートリアルの作り方はソーシャルゲームとは全然違いますし、単純に手順の説明だけではなくその段階から褒めたり、このカードを育てるという動機付けを提示しないとダメですね」と語った。

キャプション
岡村健右氏

 最後に岡本氏は、あらゆることを楽しくしたいと述べた。コントローラーを握るということは行動を狭めているので、買い物や寝る前でも楽しんでもらえる状態がいいとした。國光氏は、ゲーミフィケーションで大事なのは相手のをことを考える「おもてなし」に尽きることを繰り返し述べていた。そしてデータには答えを求めるのではなく、やったことに対する客観的な部分を徹底的に見て改善していくことが重要とした。田中氏は、教育の部分でモチベーションを上げて、嫌にならず前向きに学ぶことにゲーミフィケーションが使えたらいいとした。そして岡村氏は、日本におけるソーシャルゲームは悪い側面が強く取り上げられているが、ここまで流行ったり遊び続けられている理由については、奥底では徹底的にユーザーの動きを見ておもてなしをしているからとし、ゲーミフィケーションをやるにあたり、ソーシャルゲームは強く参考になるので、毛嫌いせずにちゃんと遊んだりチェックしたりすることがゲーミフィケーションに近づくことだとして締めくくった。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]