リード・ホフマン氏と三木谷社長が語る「日本にとってのスタートアップ」 - (page 2)

杉山貴章(オングス)2012年06月21日 11時14分

起業は崖から飛び降りながら飛行機を組み立てるようなもの

 続いて、楽天代表取締役会長 兼 社長の三木谷浩史氏が登壇、Hoffman氏とのパネルトークが行われた。三木谷氏は、楽天の起業を決意した背景には、アメリカのビジネススクール在籍中の経験が強く影響していると語った。

「いかにアメリカのビジネスマンが起業家精神にあふれているかを実感させられました。大企業の中で昇進することばかりが正解ではないんだと気づかされたのです。起業家精神が原動力となってビジネスを動かすのだと思いました。同窓生の中で最も尊敬されたのは、小さいけれど自分のビジネスを立ち上げた人たちです。そのカルチャーの違いに感銘を受け、自分も起業したいと思うようになりました」(三木谷氏)

 それに対して、Hoffman氏は次のように補足した。

「起業するということは、アメリカ人にとってもエキサイティングなことです。私自身、一度はオックスフォードで教鞭を取ろうと思ったこともありますが、それよりも起業家になることが面白いだろうと考えました。起業するということは、崖から飛び降りながら飛行機を組み立てるようなもので、多くの困難が待ち受けています。しかし、だからこそそれをやり遂げることに意味があるのです」(Hoffman氏)

 とはいえ、崖から飛び降りる決意は生半可なものではない。三木谷氏は次のように語っている。

Reid Hoffman氏と三木谷浩史氏
Reid Hoffman氏と三木谷浩史氏

「私は神戸の出身で、阪神大震災で多くの親戚や友人を失くしました。そのときに人生が短いことを実感したのです。震災が私を崖から飛び降りようという気持ちに向かわせたんです。有限の時間しかないのだから、どうせ飛び降りるならば早くやろう、と」(三木谷氏)

 結果として、三木谷氏の挑戦は成功した。それは、当時ビジネスの場としては懐疑的な部分もあったインターネットに対して、適切な仮説を立て、その可能性に賭ける“賢いリスク”を取ったからだ。Hoffman氏は次のように指摘する。

「私はよく起業家に常に大きなアイデアを追いかけるようアドバイスしています。起業家とは他の人に見えないリスクを取れる人のことです。どういったトレンドがあるのかを見極め、自分への投資の仕方を考えること。それがビジネスを成功させるために必要です。同時に、ビジネスは常に外に向いて、今の社会に順応していかなければいけません。シリコンバレーがなぜ中心になったかというと、そこにいるビジネスマンが常に外に向き、外部の人間と情報を共有しているからです。日本では三木谷さんが先頭を切ってそれを実践しています」(Hoffman氏)

競争のための強みを示す3つの要素

競争するための強みを示す3つの要素 競争するための強みを示す3つの要素
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 Hoffman氏は『スタートアップ!』の中で、競争するうえでの強みを培うことが大切であり、その強みには「大志」「資産」「市場環境」の3つの要素が必要だと述べている。

 ここで言う資産は金銭だけでなく技術や人脈なども含めたものであり、大志とは自分の思い入れや気付きのことを指す。市場環境は自身を取り巻く現実であり、常にこれを意識して競争優位を考えることが重要となる。

 これに対して三木谷氏は、「野心や社会に対する奉仕の気持ち、サービスに対する愛着心なども大切」だと付け加えた。Hoffman氏もこれには「世界を変えるんだという使命感、強い思いが必要です」と同意している。

 さて、この3要素は、スタートアップだけでなく個人のキャリアを築く上でも当てはめることができるとHoffman氏は言う。

「大事なのは自分が何を持っているのかを考えることです。技術、知識、情報、お金、人脈、いろいろなものがあると思います。これを確認してください。次に、市場の現実を見て、その中での価値を見出しましょう。合理的に考えることが大切ですが、信念を持って情熱的に考えることも重要です」(Hoffman氏)

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