2011年4月にFacebookページを開設して以来、60万人以上のファンを獲得し、投稿へのコメントが毎回100件を超えるほど人気の日本航空(JAL)。「第5回企業ウェブ・グランプリ」のソーシャルネットワーク部門でグランプリを受賞するなど、企業のSNS活用事例として成功を収めた同社がSNSに取り組んだきっかけとその目的、効果や今後の展開などについて、同社顧客マーケティング本部顧客戦略部推進グループ長の浅香浩司氏に話を伺った。
ご存じのとおり、JALは2010年に経営破綻をしました。また、それに伴う報道などにより、ブランドイメージが大きく毀損し、お客様離れが急速に進んでしまいました。一方、2009年ごろにTwitterが流行し始め、SNSに取り組む企業が増えていました。当時JALではSNSにまったく向き合っていなかったんですが、そろそろ取り組むべきではないかという声が上がり、2010年9月下旬に勉強会を立ち上げ、準備と検討を始めました。
実を言うと、経営破綻後、社会の皆さまより厳しい目で見られる中で、JALは「働いている社員の顔が見えない企業」と言うイメージを持たれていると感じておりました。そこで、2011年1月に「新生JAL」としてブランドを再構築する際、もう一度お客様と向き合うことが必要であり、そのためには双方向のコミュニケーションが大切であるという思いから、本格的にSNSのプロジェクトチームを立ち上げました。
チームは社内で有志を募って立ち上げました。JALのイメージが悪化している中で、あえてリスクのあるSNSに取り組むことに、社内でも反対意見があったのは事実です。しかし、ちょうど経営破綻後のJALのブランドイメージの再構築というタイミングでもあり、「テストマーケティング」という位置付けで社内をまとめていきました。
我々は新参者ですが、その位置づけは日に日に重みを増してきていると感じています。
新商品を発表する際、今までは広報リリースや自社ホームページ、広告などで発信する形が基本でしたが、先日「AIR MOS ライスバーガー」という商品を提供する時に、Facebookでも情報を発信しました。60万人以上のファンの方に作り手の想いを含めて情報を発信できる。それが実現できたのは、コミュニケーション力を持つFacebookがあったからこそです。これは従来の広告媒体や自社媒体にはなかったメリットであり、また、リアルタイムに反応をいただける点でも重要度は高いと考えています。今後は、より効果的、戦略的に利用していくべきメディアだと認識しています。
Twitterを始めるという選択肢もありましたが、我々が当時やりたかったことは双方向でのコミュニケーションです。JALの場合、SNSへの取り組みはプロモーション活動というよりもブランディング活動といった色が強いので、親和性を考えてFacebookを選びました。
また、実名でのコミュニケーションのほうが信頼度も高いだろうという判断もありました。当時はFacebookユーザーがまだ少なかったので、先行者メリットも大きかったですね。
Facebook導入の最大の目的は、より多くのお客様にJALを知っていただき、JALに興味を持っていただくことです。JALファンの方が「いいね!」を押していただくことで、その友人、そのまた友人とコンテンツが広がり、今までJALに興味を持たれていなかったお客様とも接点を持つことが出来る。我々はブランドイメージを回復したいという思いがありますから、より多くのお客様に今のJALの内部までしっかりと見ていただけるツールとして、Facebookは非常に有効なメディアだと思います。
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