“第4世代”に向けた総務省の取り組み--周波数割り当てやオークション

 「ワイヤレスジャパン2012」の最終日となる6月1日、第4世代(4G)のモバイルインフラ構築に向けた取り組みについて語る「4G&次世代モバイルインフラ構築フォーラム」が開催された。


総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課長の田原康生氏

 総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課長の田原康生氏は「ワイヤレスブロードバンド実現に向けた政策動向」と題する講演で、900MHz帯・700MHz帯の割り当てや、4Gに向けた新たな周波数帯の確保など、次世代通信に向けた総務省の取り組みについて説明した。

年間約2倍のペースでトラフィックが増加

 田原氏は冒頭、携帯電話サービスの現状について触れ、日本では2011年度末時点で、3GとLTEを含めた携帯電話の加入者数が1億2800万となり、人口普及率が100%を超えたと説明。さらに世界に目を向けると、プリペイド契約を含めた加入者が昨年末時点で約60億、人口普及率で85%にも達しているという。

 スマートフォンの普及も急速に進んでおり、昨年の携帯電話出荷台数15.5億台のうち、およそ3分の1に当たる4.8億台がスマートフォンとなっているようだ。日本ではこの比率がより上がって56.6%、4年後には8割に達するとの予測を示した。

 その一方でトラフィックも急速に伸びており、毎年年間約2倍のペースで上昇しているとのこと。特に日本では、3GやLTEなどが広まっていることから、世界の約1割のトラフィックを生み出しているという。

  • 携帯電話出荷台数に占めるスマートフォンの比率が急増、トラフィック増加の主因となっている

 最近では定額で映像を配信するサービスなどが増えていることから、スマートフォンの利用によるトラフィックがより増えていくものと考えられ、それに対処するためにも、より通信利用効率のよい新しい通信方式への移行が進められていると説明。現在主流と見られている通信方式はLTEで、特に日本をはじめとして、世界の多くの国でFDD(周波数分割複信)システムを採用したLTE(FDD-LTE)の採用が進んでいるとした。

4Gに向けた新たな周波数帯の確保

 トラフィックの対処や、新しい通信方式の導入をする上で重要なのは、新しい周波数帯の割り当てだ。現在、日本では携帯電話向けに約400MHz、BWA(広域移動無線アクセス)システムやPHSなどを含めると、およそ500MHz幅の帯域が割り当てられているが、総務省では2015年までに新たに300MHz幅、2020年までに1500MHz幅の周波数を確保したいとしている。

 そこで最近のトピックとなっているのが、地上波デジタル放送の移行にともない空きができる700MHzと、携帯電話の800MHz帯の再編によって空きができる900MHz帯の割り当てだ。

 田原氏は、それぞれの周波数帯の割り当てに関する経緯について触れ、両帯域の割り当てに関する議論は一昨年からなされており、当初は素早い割り当てを実現するため900MHzと700MHz帯をペアで使う方針であった。しかし、国際的な利用形態に合わせるべきとの議論があったことから、最終的に現在の割り当て方針になったと説明した。

 すでに900MHz帯はソフトバンクモバイルへの割り当てが決まっており、同社は7月25日から利用を開始すると発表している。ただし900MHz帯は現在、タクシーなどに用いられているMCA無線や、電子タグ(RFID)などに使用されており、これらが用いる周波数帯域を引っ越しする必要がある。そのため当初から利用可能なのは、15MHz×2幅のうち、5MHz×2幅のみに限られ、すべての帯域が利用できるのは数年後になると、田原氏は説明している。

  • 700MHz帯は3社に割り当てられる予定だが、こちらも900MHz帯同様、利用にあたってはラジオマイクなどの帯域を移動する必要がある

 また7月にも割り当てが決まるとされる700MHz帯については、アジア太平洋地区との共通バンドに合わせる形で帯域を用意し、10MHz×2幅の帯域を3グループに割り当てる方針だという。現在3社からの申し込みがあり、順当にいけばすべてのグループに割り当てられる予定だが、3つのうちどの帯域の取得を希望するかで重複があった場合は、審査が行われる可能性があるとのことだ。

 現在はLTEに向けた周波数帯の確保が進められている状況だが、総務省ではLTEの先を見据え、第4世代となるIMT-Advancedに向けた周波数割り当ても進めている。現在のところ3.4~3.6GHz帯を確保する方針だが、この帯域だけでは200MHz幅しか確保できないため、4.2GHzまでの確保を目指しているようだ。ただしこの帯域は、途上国で多く利用されている固定衛星の帯域と重なることから、国際的な議論が必要になるという。

  • IMT-Advancedの導入に向けては、3.4~3.6GHz帯に加え、3.6~4.2GHz帯の確保も目指している

 また総務省では、モバイルWiMAXやAXGPなどのBWAについても、より高速・大容量通信ができるよう動きを進めているとのこと。モバイルWiMAXの帯域の隣にあり、かつてモバイル放送で利用されていた帯域(2625~2655MHz)へ、BWAの帯域を拡張する検討もなされているが、周波帯域の獲得を審査するオークション制度の導入に関する動向が定まっていないことから、まだ決められない状況にあるとのこと。

 その周波数オークションの現状についても、田原氏は説明。オークションの実施に向けた電波法の改正案を今国会に提出している最中であり、いつ実施されてもいいよう2013年の夏までには環境整備をしたいと話している。実際には4Gで利用する3.4~3.6GHz帯を割り当てる際に実施されると考えられ、海外の動向を見ながら進めていく方針のようだ。

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