ワイヤレスやモバイルの最新技術とサービスに関する国内最大級の展示会「ワイヤレスジャパン2012」が東京ビッグサイトで開幕した。開催期間は5月30日〜6月1日まで。初日は、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏が「3M戦略が目指す世界」と題する基調講演を行った。
3M戦略とは、さまざまなサービスやコンテンツを、最適なネットワーク、かつ好きなデバイスで利用できる通信環境を整えることを目指した「マルチデバイス」「マルチネットワーク」「マルチユース」の3つの頭文字からなるKDDIの成長戦略だ。
田中氏は、「国内は3M戦略を進めて行き、海外はグローバル戦略で成長を担保していこうと思っている」とした。今回は、国内の戦略にフォーカスを当てたものとなっている。
2012年1月、田中氏は3M戦略の第一弾として、「スマートパスポート構想」を発表。スマートパスポート構想は「auスマートパス」「auスマートバリュー」「au ID」の3つのキーファクタによって構成される。
FTTH/CATV各社と連携し、指定の固定通信サービスに契約することで、最大2年間スマートフォンの月額料金を1480円割引くauスマートバリューは、すでに100万契約を突破。
「サービスはシンプルだが、裏方としては各社とシステム連携をしていかないとならないので、プロセスとしては大変なサービス。だが、家族4人がauスマホに入ると、5920円オフ。家族で入ればブロードバンドがタダになる。インパクトのあるメッセージができた」と語った。
月額390円で500本のアプリを自由にダウンロードでき、10Gバイトのストレージなどを提供するauスマートパスも開始から2カ月で100万契約を突破している。さらに5月には「スマートパスポート構想 STEP2」として、「スマートフォンをもっと楽しんでほしい」とし、新サービス「うたパス」と「ビデオパス」を発表した。新作ビデオが見られるビデオパスは5月15日からサービスを開始しており、うたパスは6月中旬より開始を予定している。
「社長になってから、スマートタイプ、付加価値がついたオペレーターになりたいと言ってきた」と田中氏は言う。au IDをキーにし、スマートフォンだけでなく、タブレットやPC、テレビなども含めたマルチデバイスに対応していきたい考えだ。
一方でなぜこの3M戦略なのか。田中氏は、2000年以前と2000年代を比較すると、大きな変化の1つは携帯電話の力が強くなったことではないかと言う。
「家の中でもケータイを使うようになった。ケータイの上にメール、ウェブ、ワンセグなどの機能が載り、PCや家のTVでやっていることの一部をケータイに取り込んできた世界。2000年代は、ケータイにいろんな機能を載せるケータイコンバージェンスの時代だった」と振り返った。
さらに「ネットワークサイドも変わってきていて、3Gになるとインターネットにつなぐのが当たり前。この流れは、スマホでさらに加速している。スタートポイントは、スマホだって限界があるんじゃないかということだった」と語った。
「例えば、PCになりきれないスマホ。生産性を上げようと思うとPCがいる。PCになれないスマホの姿がそこにある。テレビも、キレイな画質で大画面でみたいのが本能。家族みんなで一緒に楽しみたい、そうなるとスマホだと限界がくるんじゃないか」と語った。
もっとも大きな理由は、モバイルネットワークのトラフィック増加だ。「この1年で総データ量が3倍になっている。われわれの予測では、2015年までに25倍になると予測。(インフラの)7割をたった数パーセントのスマホが使い切っている。データ量を支えきれない。こういうことを考えて、次の時代を見た戦略を考えなければならない。シングルデバイスだけでなく、マルチで考え、マルチなネットワークを戦略の基本に置かなきゃならない」とした。
また、「モバイルネットワークはオールマイティでなく、限界が近づいているのも事実。TPOで使い分けることを考えなければならない。やりたいことがシームレスにできることを基本に考えた。こんなイメージを描いて、3M戦略を立てた」と語った。
3M戦略の基本は、マルチの戦略という。シングル・デバイスからマルチデバイスへ。シングルネットワークからマルチ・ネットワークへ。シングルユースからマルチユースへ。「固定にどれだけオフロードできているか。どれだけサクサク使えるかが基本になっている」とした。現在はSTEP 2だが、秋をめどにSTEP 3を予定しており、その一部を明かした。
「マルチユースはもう少し強化していきたいという思いがある。マルチ ネットワークLTEを垂直立ち上げでやらせていただく。いつからやるのかは申し上げていないが、結構がんばろうかなというふうに思っている。デバイスについては、LTEの開始にあわせて相当気合いを入れて種類をそろえ、もう一度強化していきたいという思いがある。まだ言えていないことはたくさんあるが、今後を期待してほしい」と締めくくった。
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