シードアクセラレーターの役割は「立ち上げ直後の支援」--MOVIDA JAPAN

 スタートアップを支援するインキュベーター、シードアクセラレーターと呼ばれる存在が増えてきたが、それぞれ支援の方法や提供するプログラム、資金提供の方法などその考え方は多岐にわたる。

 その1社であるMOVIDA JAPANは、アジアにシリコンバレー並みのエコシステムを作るという目標のもとに、2011年よりスタートアップ向けのプログラムを展開している。プログラムの「卒業式」とも言えるデモデイを3月に終えたMOVIDA JAPAN チーフアクセラレーターの伊藤健吾氏に、同社の取り組みについて聞いた。

--先月には第1回目のデモデイが終わりました。1期生で特徴的な起業家はいましたか?


MOVIDA JAPAN チーフアクセラレーターの伊藤健吾氏

 ポートフォリオ的には7社になりました。もちろんそれぞれ特徴はあるんですが、cocoa motorsという超小型EV(Electric Vehicle)のアイデアを持ってきたスタートアップがいます。奇想天外に思えるアイデアだったけど、アイデアだけでなく人としての魅力があったんです。代表の別府泰典さんは、自信たっぷりに「アイデアは実現できる」ということをプレゼンする能力がずば抜けている一方、分かってないこともたくさんあるということを理解していた。それで物怖じしないんですよ。とにかく彼の話には説得力があったし、相当に難易度が高いアイデアだけど、彼なら実現できるだろうと賭けてみることにしました。

--逆にセレクションを通らなかった起業家については

 経験がある人ほど、応募フォームをきちんと記入してこない傾向がありました。中でもほとんどの項目に「後ほど説明します」と書いてあったものがありました。「(セレクションするのに)隠してどないすんねん」と(笑)

 とはいえできるだけ数多くの応募プロジェクトを直接インタビューしようと考えていました。こういったものは除きましたが、100件近い応募の3分の2ほどは実際にインタビューしました。

--MOVIDA JAPANとして支援プログラムを始めた経緯について教えてください。

 元々商社時代からベンチャー投資を担当したりしていたので(編集部注:伊藤氏は新卒で三井物産に入社していた)、スタートアップの支援をやっていきたいと思っていたんです。ただ日本にはシリコンバレーのようなエコシステムがないので、なかなか難しいということをずっと感じていました。そういった話をたまたまMOVIDA JAPAN代表取締役の孫泰蔵とする機会があったのですが、彼も「東アジアにシリコンバレーのようなエコシステムを作りたい」という同じ想いを持っていて、意気投合したのがきっかけです。

 その後半年ほど、どういったことをやっていけばいいのかという議論を重ねていくうちに、シリコンバレーのように量が質を産む環境を目指すのであれば、とにかく数を沢山やって裾野を広げていくことで、エコシステムとして必要なものが見えていくだろうとコンセプトがまとまっていきました。

 あとはタイミングですね。ソーシャルやクラウド、スマートフォン、小額でスタートアップできる「Lean Startup」の環境がそろいつつあった。特にシリコンバレーではY Combinatorの成功があったので、良いところはとにかく模倣してでも始めてみようということで、2011年の8月に公募を開始したというのが経緯です。

--具体的なプログラムについて教えてください。

 第1期のデモデイが終わったところなんですが、そこに向かって週1回のスクーリングやワークショップ、ピッチのリハーサルを実施していました。公募から約20社をスクーリング参加企業として選抜し、その中から7社に対して実際に日本版Convertible Notes(転換社債)での出資をしています。スクーリングではビジネスモデルの作り方や創業期のファイナンスなど、網羅的なテーマで先輩起業家や各種専門家に来ていただいて1時間程度の講座形式のものを提供してました。

 またデモデイに向けたリハーサルとして、月1回ペースで、実際に5分ピッチを行い、皆で講評しあうスタイルでやっていました。これはお互いに切磋琢磨する状況で非常によかったです。デモデイには最終的に50社100名以上の投資家や事業パートナーの方に参加頂くことができ、実際に次のステップとしての話を始めているところもあります。

--ビジネスという視点で、MOVIDA JAPANはどのような方向性を考えているのでしょうか。

 インキュベーションっていうのはそもそも初期にオペレーションコストを垂れ流すような仕組みです。キャピタルゲインが主なリターンになりますが、実際に入ってくるまでのキャッシュフローはネガティブになるし、ビジネスとしてインキュベーションを成立させるのは不確実なキャピタルゲインを前提とするので簡単ではないんです。

 シードアクセラレーターの役割というのは、スタートアップ直後の立ち上げのときの支援に集中していて、最初の成長ステージまでを考えること。僕達の役割はそういう意味では、たとえば次の投資家が新たに入ってくるタイミングでは一定まで終えているとも言えます。

 役割を終えたということで、次の投資家にバトンタッチして自分達の株の持分を半分売却することができれば、その資金で新たに次のスタートアップを支援できるし、オペレーションコストもまかなえるようになります。

 3年後までに250社を支援するという目標を掲げているんですが、自分達の投資フォーマットである1社あたり500万円という金額でも単純計算で12億円必要になります。この数を実現していくためには、役割を終えた段階で次にバトンタッチしてエグジットしていくというのも必要になってくるだろうと認識しています。

--投資家によるシード期の株の持ち方についてはいろいろな考え方があります。どういったポリシーをお持ちでしょうか。

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