Googleの「Project Glass」で開発されている拡張現実メガネを筆者が使う可能性はかなり低いだろう。しかし、同社が型破りなコンセプトを「Google X Labs」に取り入れていることは、称賛しなければならない。
Googleは米国時間4月4日、「Project Glass」計画の存在を初めて認めた。このプロジェクトでは、メガネのようなフレームを用いて、基本的には右目の上にある小さな画面でインターネットを見られるようにする。デモ動画には、メガネの装着者の視点で、まるでスマートフォンを使うように友人と連絡を取り合ったり、情報を探したりする様子が示されている。
筆者個人としては、1日を過ごす中で注意をそらす原因となるものはこれ以上必要ないと考えているため、「Google Glasses 1.0」を買うつもりはない(発売されればの話だが)。
それより面白いのは、Project Glassを生み出したGoogle X Labsの作品が、日の目を見るようになってきたことだ(4月4日の投稿で、Project GlassグループはGoogle X LabsをGoogle[x]と呼んでいる)。
Google Xとは何だろうか。われわれがGoogle X Labsについて知っていることのほとんどは、2011年秋のThe New York Timesの記事から来ている。この記事では、エンジニアたちが自動運転車などのロボティクスプロジェクトや「Web of things」、そして宇宙エレベーターにまで取り組んでいることが伝えられた。
Googleの共同創設者のSergey Brin氏が深く関与していると言われているこの秘密の研究室は、困難な技術的問題に取り組み、いつの日かGoogleの新たな収入源となるような製品を開発することを目的としている。
Googleは先々週、自動運転車が視力のほとんどを失っている男性を乗せてショッピングセンターに向かう動画を発表したばかりだ。この動画は、そのテクノロジが男性の人生をどのように向上させられるかを示す感動的な事例だった。
自動運転車やProject Glassが商業的なインパクトを与えられるかどうかはまだ分からない。しかし、この種の研究や新たな技術の開発は、Googleだけでなく、ビジネスや革新全般にとっても極めて意味のあることだ。
次のFacebookの座を狙っている新興企業や、話題のモバイルアプリを開発することを目指して競っている新興企業はいくらでもある。しかし、ロボティクスや、相互接続された家電などのデバイス(Internet of things)、そのほかの「ハードサイエンス」の技術開発は進み方が遅く、何年にもわたる取り組みを必要とする。ベル研究所は、われわれが現在恩恵を受けている技術革新を生み出してきた歴史的に重要な研究所であり、民間による長期にわたる集中的な研究と科学的発見がどれほど有意義なものになり得るかを示してきた。
Googleの上層部は、同社が技術的課題のすべてには挑戦できないことを既に学んでいる。Googleほど強大であっても、「Renewable Energy Less than Coal」という意欲的なイニシアチブを廃止しなければならなかったし、「Google Power Meter」や「Google Health」のような始まったばかりの製品ラインも断念する必要があった。
Google X Labsも、必ず何らかの行き詰まりを迎えるだろう。また、その研究の性質上、製品を発売するまでには数カ月どころか数年かかる可能性もある。
Googleの大きな強みは、長期的研究を行うための財力を備えた、消費者と直接対応する企業だということだ。つまりGoogleは、例えばIBMやHewlett-Packard(HP)と比べて、新技術のコンセプトをはるかにうまく世に広められる。
自動運転車を初めて見たときの筆者の反応は、「自分には必要ない」というものだった。しかし、Googleのプロジェクトを詳しく知るにつれて、その美点に気付く。いつか筆者にも、このおかしなコンピュータ制御の拡張現実メガネをかける日が来るのかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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