パナソニックは、6月27日付けで現代表取締役社長の大坪文雄氏が代表取締役会長に就任し、代表取締役専務の津賀一宏氏が代表取締役社長に就任する社長人事を発表した。
2月28日、大阪市内のホテルで会見した津賀次期社長は「2月上旬に社長の打診を受けた。わが耳を疑うばかり、まさに青天の霹靂という思い。だが、時間が経つにつれ、経営をとリまく環境の厳しさに立ち向かう決意と同時に、本年1月に新たな体制でスタートしたパナソニックの船出の鍵を握るという心踊る思いが芽生えてきた」と発言。
「創業100周年を迎える2018年に、環境革新企業の実現を掲げている。微力だが、粉骨砕身がんばり、次の世代につないでいく」と語った。
加えて、「我々の持っているポテンシャルからして、現在の売上の規模は非常に少ない。もっと収益を伴って成長できる。きっちりと地に足の着いた活動をしていきたい」と抱負を述べた。
また、「2011年4月より担当しているテレビ事業が大きな赤字を計上する一因を担っており、申し訳ない思いで一杯だ。だが、この10年は薄型テレビが成長の中心であり、技術の革新の中心であった。10年蓄積したパワーによって、次の時代にさらなる飛躍をする。三洋電機、パナソニック電工の統合においても社内に大きなエネルギーがたまっており、この出口をうまく設定すれば、必ずや将来の収益改善と成長性のネタになる」と語った。
担当していたテレビ事業については、「この1年間はお客様が求めるテレビを本当に作れているのかどうかを反省して商品を作り直した。これまでは成長性を追いすぎた。テレビは安くして多く売ろうとしても、一家に100台もいらない。それにも関わらずがんばって売ろうとし過ぎたことで収益性を失ってきた」と指摘。
「数を追わずに、1〜2年後を見て正常化する方向で進める」と語る一方で、「今後の成長分野は『環境』と『まるごと』という2つの新しいキーワード。これは言い換えれば『エコ&スマート』。この言葉の方が、今の私にはぴったりきている、全社共通の言葉にできるものであり、『エコ&スマート』な暮らしをしよう、あるいはそういう商品を提供しようという気持ちで、すべての商品や事業を見ていけば、世の中に受け入れて頂く成長分野が作れるのではないかと考えている」とした。
さらに「座右の銘はない」としながらも、「心がけている言葉は『自責』。自分の責任と言う意味での自責である」とした。
また、自らの特長については「もともと技術者で理科系だが、気持ち半分は技術者で、半分は技術者でない。技術を盲信せず、物事を論理的に考える。仮説、検証ということを大切にして、物事を見るようにしている。サムスン、トヨタといった成長している企業ほど危機感は大きい。われわれは現在、それ以上の危機感を持って臨んでいるが、それを全員が共有しているかということについてはまだまだかもしれない。復活に必要なものは、人の能力をどれだけ引き出せるか。そういう経営をしたい」と語った。
一方、大坪社長は「後継者は常々認識していた。2月3日に2011年度の見通しが7800億円の赤字になると発表した。その後、心の整理をして、中村会長に『私の役割は終わったので退任します』と伝えた。中村会長からは『本当にご苦労さんでしたね』といっていただいた。過去からさまざまな手を打ってきたが、2018年に環境革新企業を目指すという新たな企業の形を決めてスタートできた、このタイミングが退任にはベストであると感じた」としながら、「津賀氏は経営課題の奥にある問題をつかもうというマインドが常にある。複雑な時代のトップとして、きわめてふさわしい。また、目線も心も常に外を向いており、社内よりも社外に学ぼうというマインドがある」と評価。
津賀氏に対しては「私の大きな役割は終わった。将来の方向も明確であると思うので、あとは君にバトンタッチしたい。思う存分、自分の思う通り、新しい経営を進めてくれと話した」という。
さらに大坪社長は「7800億円という巨額の赤字は、従業員に大きな痛みを伴った改革の結果であり、社会の皆様に大きな心配をおかけしたことを大変申し訳なく思っている。しかし、外部の大きな混乱要因のなかにあって、パナソニックへの社名変更、三洋電機買収、エネルギー・環境に軸足を置く会社へと進むべき方向を決め、企業を存続させるための大きな土台は築けたと思う。自分としては、将来の成長の布石を明確にし、社長の責任は果たせたと思っている」と語った。
また、「パナソニックは伝統的に会長と社長が経営の最高責任を持つ。これは変わらない。実際の事業の推進は社長のリーダーシップで行い、会長は対外的な活動、あるいは国内外のパナソニックの代表としての仕事を主に推進していく」と、今後の役割分担について語った。
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