ソーシャルメディアをテーマにしたカンファレンス「SOCIAL MEDIA WEEK TOKYO」が2月13日から17日まで開催中だ。2月14日には、btrax CEOのブランドン片山ヒル氏が登壇。米国のソーシャルメディアマーケティングの状況と事例について語った。
ブランドン氏は現在サンフランシスコを拠点に日本企業のブランディングやマーケティングなどに関連する海外展開プロジェクトを手がけている。また、日本のスタートアップがサンフランシスコでピッチを披露するイベント「SF New Tech Japan Night」を主催するなど、日米双方の起業家を支援する取り組みにも積極的に参加している。
ソーシャルメディアが米国でどのようにとらえられているのか――ブランドン氏はTwitterの共同創業者、ビズ・ストーン氏と話したというハドソン川の不時着事故の話題を引き合いに「誰もがジャーナリストになれる時代」と話す。2009年に起きたUSエアウェイズ1549便のハドソン川への不時着水事故では、ジャーナリストが報道する前に乗客がTwitterでその状況を発信していたことで、話題が瞬く間に広がった経緯がある。遠くにいるプロのジャーナリストよりも、近くのブロガーのほうがコンテンツ価値としては高い。それがソーシャルメディアの時代なのだ。
ではその状況を企業ではどうとらえればいいのか? ブランドン氏は「マーケティング、ブランディング、そしてカスタマーリレーションシップ。この辺りに強力な力を発揮する。最近はそれに加えて人事関連も価値が上がってきている」とピックアップすべきポイントを明らかにした。
ブランドン氏が提示した資料の統計によると、ネットユーザーの過半数は必ず他の人のブログなどで商品をチェックし、8割以上が知人のおすすめ情報を信用するそうだ。逆に広告を信頼しているのは14%に留まる。ブランドン氏は「これから分かるのは、最も効果的なマーケティングは口コミ」とし、企業はソーシャルメディアを口コミを産み出す仕組みとして価値を見い出すべきだと説明する。
さらに重要なキーワードとして「Relevancy」(関連性)を挙げ、人間関係や興味、場所や生活スタイルなど、「人にまつわる関係性」に注目すべきと語る。この点については日本も米国もあまり変わりはないそうだ。
ブランドン氏は米国でCorona Extra(コロナビール)がFacebookを活用して成功を納めたケースを紹介していた。ユーザーはCorona ExtraのFacebookページを「Like(いいね!)」することで自分の写真をアップロードできるのだが、このアップロードした写真がニューヨークのタイムズスクエアに表示されるということで大きな話題を集めることに成功した。
「ブランディングというとロゴやデザインを思い浮かべるかもしれない。しかし大切なのはユーザーにとってのイメージ。体験をもとに顧客1人1人が感じるもの、それがブランディングにつながる」――ブランドン氏はソーシャルメディアの前にまず、ブランド作りの考え方を伝える。
「ソーシャルメディアは相互関係を産み出しやすい。米国ではブランドを企業側が一方的に作るのではなく、どうして欲しいかをユーザーから聞く。聞き上手になることでユーザーは企業に対する思い入れを強くする。企業側がどうしたいというよりも、自分達が作っているという意識にさせる。そういうレベルに持っていけるのがソーシャルメディアを使ったブランディング」(同氏)
さらにエンゲージメントの重要性を自身の体験に重ねて語った。「私はもともとWindowsユーザー。周囲がアップル製品はいいよといっても実感はなかった。でもある時iPod shuffleを購入した。次にiPhone。そして今はアップル製のノートブックを使っている」――ブランドン氏が自身の体験から語るように、「芋づる式」にユーザーが良いと思わせるポイントを作っていくことがエンゲージメント。企業がユーザーにどんどん関わっていくことが重要なのだという。
一方でブランドン氏はユーザーがエンゲージメントしなかった事例を挙げた。それがアパレルメーカーのGAPがロゴを変更して早々に元に戻した、という事例だ。「米国の消費者は、ソーシャルメディアを使ってこのデザインを酷評した。多くのユーザーが反対した結果、数週間で元のデザインに戻った。ユーザーをエンゲージできていないとこうなる」。ブランドとは、あくまで顧客が作るものだというわけだ。
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