ソーシャルメディアをテーマに、世界各都市で同時に開催されるイベント「SOCIAL MEDIA WEEK TOKYO」が2月13日から17日まで開催中だ。今回、初めて日本での開催が決定し、東京の会場でもさまざまな講演が繰り広げられている。
初日の2月13日には、「世界の変化とソーシャル・メディア」と題して、ジャーナリストの田原総一朗氏と佐々木俊尚氏による基調対論が行われた。
最初に2人が語ったのはTwitterについて。佐々木氏は、東日本大震災以降に情報収集目的でTwitterの利用が増えた結果、ツイート数が大幅に増えたと説明。加えて、ジャーナリストがTwitterを積極的に利用していることを紹介した。2月には朝日新聞が記者のTwitterアカウントを公開したが、毎日新聞でも記者のTwitterアカウントを公開する動きがあるという。
それに対して田原氏は「新聞記者が自社の批判に対してどう答えるのか?」と疑問を呈する。佐々木氏は「社論と自分の意見がイコールにならないからやらないと思っていたが、そこはもう境目をなくしていいのではないか」と語る。
会社と個人の意見がまったく一致する訳がないという前提で、意見を発信すべきというのが佐々木氏の考えだ。佐々木氏はTwitterアカウントを公開した朝日新聞社を例に挙げ、同社内でも部署によって考え方が違い、議論があると説明。「(大きな組織を)1つの社論にまとめるのは難しい。であれば個人が『社論と関係ない』と注釈をつけた上で議論をする。どんどん議論し、社内でどんなことが起きているかも伝えていく。それこそがジャーナリズムではないか」(佐々木氏)
新聞社とソーシャルメディアの融合から、話題は旧来メディアとソーシャルメディアの方向性に移る。
テレビとインターネットがシームレスにつながる「スマートテレビ」の時代は数年後にも到来すると言われている。そんな時代になったとき、過激な表現に規制のあるテレビのコンテンツはどうなるのか? 佐々木氏は、むしろテレビ番組が活性化するのではないかと期待を寄せる。「ニコニコ動画で、人が通っているだけというコンテンツとしてつまらない動画があった。しかしそれに対して『美人キターーー!』といったようにソーシャルでコメントをして、コンテンツとしておもしろくなる。そういったやりとり自体が番組制作に逆流していくのではないか」(佐々木氏)
また新聞については、広告売り上げが減少傾向にあるものの、販売が堅固であり、今すぐ淘汰される存在ではないと説明。だが一方で、ファン層が若返らない限り、減少傾向は止まらないと説明する。
そんな新聞社の生き残り施策として、一部のコンテンツを有料にしてユーザーを囲い込む「ペイウォール」方式のメディアが増えてきている。佐々木氏はそれに対して「一見お金は儲かるが、ソーシャルメディア的な発想としては共有できないので、みんなに見てもらえない。そうするとソーシャルの世界の中で新聞社の存在感がなくなっていくのではないか」と危機感を示した。
ここで田原氏が会場内の参加者に対して、新聞を取っていない人に挙手を求めたところ、半数ほどしか手を挙げなかった。佐々木氏はウェブでニュースを読める上、1つの記事に対して、ブログやTwitterでさまざまな考察や分析が発表されるようになってきたため「紙の新聞を読む必要性がなくなってきたのでは」と語る。一方で田原氏も米国の新聞と比較して分析記事が少ないと指摘。ソーシャルメディアでの分析記事のほうがおもしろいケースもあるとした。
また2人は、「ネットの世論」というものが盛り上がっている一方、それが健在化されていないことも課題だと語る。たとえば新聞社の電話調査では、そもそも電話に出ない若者がいるだけでなく、実施する時間によっても結果が大きく変わってくる。こういった顕在化されていない20~30代の声を可視化し、より政治にぶつけていくべきだとした。
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