オープンシステムはまた、「ワイルド・ワイルド・ウエスト」効果を引き起こす場合がある。設計上、オープンエコシステムでは、コミュニティが製品の洗練化や拡大の助けになるよう、ほぼ必ず、創造的なプロセスへの参加障壁が低くなっている。ところがこのことが、悪意のある攻撃者やその他の愚者に、ユーザー体験を損ねる機会を与えてしまう。
例えば(半オープンエコシステムの)PCの世界では、これが原因でスパイウェアとマルウェアの問題が大きくなっており、この問題がコンピュータを行き詰まらせ、ユーザーのセキュリティとプライバシを侵害している。Appleの閉じたシステム(Mac、iPad、iPhone)も時には同様の問題に悩まされているが、Windows PCや、最近のAndroidデバイスの極端な状況にはほど遠い。ただし、その心の平和の代償として、Appleのデバイスにロックインされてしまうことになる。Appleのシステムのために購入したアプリは、他の会社のシステムでは動かない。
オープンウェブ上では、ブログや写真共有サイト、掲示板を使用すると、面白半分で人に嫌がらせをするために話しかけてくる、悪質な匿名のユーザーと関わって不快な体験をすることがあるため、多くの時間を費やさないという人も多い。Facebookが急速に成長した理由の1つは、嫌な相手に邪魔されずに、話したい相手とオンラインで会話する方法を作り出したことだ。Facebookは、ユーザー同士が相互にお互いのコンテンツを見せ合い、それにコメントできるようにすることを合意した、プライベートで独占的なネットワークなのだ。
もちろん、Facebookがインターネット最大のサイトに台頭し、投資家からより多くの資金を集めるに従い、元々の目的からは逸れてきている。今ではFacebookは、ユーザーに情報のほとんどを公開して欲しいと考えているが(同社がそれを収益化しやすいように)、その一方でデータはFacebookのサーバに閉じ込めており、ユーザーがそれをエクスポートすることは許していない。これは、わたしがFacebookはいずれ崩壊する運命にあると考えている大きな理由の1つだ。ユーザーは、ゲームの最中にルールを変えられることを嫌うものであり、これがFacebookの顧客満足度が米国税庁よりも低い理由の1つとなっている。とにかく、Facebookの劇的な台頭の理由は、部分的にはオープンウェブの問題に対する反動であることは否定できない。
現在、テクノロジー業界の一般的な期待は、ユーザーが独占的な閉じたシステムを不快に感じてうんざりすれば、振り子は再びオープンシステムの方に揺り戻ってくるだろうというものだ。わたしも、過去2年ほどの間、同じ仮定をしていたことを認める。しかし、今のところその兆候は見られない。ますます大きくなるAppleとFacebookの成功は、依然として閉じたシステムが隆盛する流れにあるという証拠だ。実際、テクノロジーの世界の所有権が、ギークたちの手から大衆の手へと渡っていくに連れ、「大衆は単純に閉じたシステムの方により満足しているのではないか?」という疑問は大きくなってきている。もしその答えが明確に「イエス」であると判明すれば、われわれは、今考えられているよりも、はるかに大きくて長期的な変化の最中にいることになる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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