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「もしドラ」編集者の新会社が第1号--フェムト・スタートアップの投資が本格始動

岩本有平 (編集部)2012年02月01日 10時30分
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 フェムト・スタートアップLLP(フェムト・スタートアップ)は2月1日、ピースオブケイクに320万円を投資し、第三者割当増資で5.2%の株式を取得したと発表した。

 フェムト・スタートアップは、磯崎哲也氏(磯崎哲也事務所)とインターリンク、横山正氏(インターリンク代表取締役)が1月1日付で立ち上げた有限責任事業組合。今回のピースオブケイクが第1号の出資案件となる。

投資に関する「日本のプラクティス」を作る

 磯崎氏と言えば、長銀総合研究所でコンサルタントやアナリストとして活躍したのち、カブドットコム証券やネットイヤーグループの立ち上げに携わり、ミクシィ社外監査役、法科大学院講師などを務めてきた人物。

 「今、インキュベーターは出てきているが、いまひとつ『日本のプラクティス』が固まっていないのではないか」――LLP設立の契機の1つとして磯崎氏はこう語る。

 米国であれば、Y Combinatorや500 Startupsなどインキュベーターが、5~6%程度の株式を取得して数万ドルの資金を提供するという水準ができあがっていが、日本ではそういった“相場感”がまだないため、200万~300万円の出資で30%以上の株式を取得するというようなケースもあるという。「日本の上場慣行はコンサバティブなところがある。上場時には社長に株式の5割持っていて欲しいし、VC(ベンチャーキャピタル)やストックオプションを合わせても2~3割に抑えて欲しいと思っている。創業間もない時期に投資家に安い株価で30~40%といった株式を握られてしまうと、結局M&Aしかエグジットの選択肢がなくなる」(磯崎氏)。しかし、日本でM&Aは積極的に行われているとは言い難い状況。これではスタートアップの「出口」は見えないままだ。


フェムト・スタートアップ ゼネラルパートナーの磯崎哲也氏

 だが米国でも、1980年代頃はエグジットといえばIPOが主流で、そこからM&Aが増えてきたのだという。「M&Aでベンチャーを買ってきたのは、CISCOやGoogleなどに代表される巨大化したベンチャー。彼らが急成長して足りない機能を求めて買収してきた。ベンチャーが興ることで、経済の生産性も上がり、既存企業も意識が変わる。今やるべきは、まだ、大きく成長するようなベンチャーを作ることなのではないか」(磯崎氏)。フェムト・スタートアップが狙うのも、そんな大企業となるべきベンチャーの発掘。そのためには、投資契約書のテンプレートなども公開していくなど、磯崎氏の言う「日本のプラクティス作り」に向けた施策も行う。

 磯崎氏は加えて、「日本は、テクノロジーではシリコンバレーと大差がない。また、ビジネス面でも国境なく展開できる状況になりつつある。一方でベンチャーのファイナンスだけは15年以上遅れている」と説明する。たとえば米国では優先株で投資をする、Convertible Notes(転換権付きの貸付)を使うという手法があるが、これは1980年代からの30年間で試行錯誤しながらできあがってきたものだという。「今や、テクノロジーの世界でタイムマシン経営が成り立つかどうかは疑問だが、ベンチャーファイナンスについてはタイムマシン経営が成り立つのではないか」(磯崎氏)

第1号案件は元「もしドラ」編集者による新会社

 そんなフェムト・スタートアップが投資するピースオブケイクは、2011年12月の設立。代表取締役CEOを務める加藤貞顕氏は、これまでアスキー(当時)でPC雑誌や語学学習書籍の「英語耳」シリーズ等の編集を経験。その後ダイヤモンド社で編集者として「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」「スタバではグランデを買え!」などの書籍を担当。さらにはダイヤモンド社のスマートフォン向け電子書籍リーダーアプリ「DReader(現:BookPorter)」の開発にも携わった人物。また取締役CTOの原永淳氏は、ヤフーのエンジニアを経験した後、スパークラボを設立。ブランケットのカーシェアリングサービス「CaFoRe」なども開発してきた。

 「今言われている『電子書籍』は、デジタルコンテンツの最終点ではないと思っていた。たとえばDReaderでも、ページをめくるように操作(スワイプ)しなくても、タップするだけでページ送りできるようにした。実際、めくるような動作よりタップのほうが操作感は良かった。操作ひとつとっても、電子書籍は紙の置き換えではない」――前職では、電子書籍を文字通りプラットフォームから作ってきた加藤氏だが、デジタルコンテンツでのさらなる新しい体験を提供すべく起業したと語る。


ピースオブケイク代表取締役CEOの加藤貞顕氏

 具体的なプロダクトについては明言しなかったが、同社ではデジタルデバイスに向けた、新しいコンテンツ配信プラットフォームを作っていくという。「もっとリッチだったりインタラクティブだったり、あるいはものすごく短かったり長かったり、電子書籍、デジタルコンテンツはもっと自由になれるはず」(加藤氏)。コンテンツのボリュームについても、「今まで紙の本をデジタル化していたので、200ページの本がiPhoneだと1000ページなるということもあった。だが短いコンテンツを売る枠組みはない。それなら自分たちで作ろうという発想。動画にしても、YouTubeが登場して以来、短時間のコンテンツに慣れ、長時間見続けるという耐性は落ちている」(加藤氏)と説明する。サービスの詳細は今春にも明らかにするという。

 フェムト・スタートアップでは今後も、200万~300万円の投資で平均5%程度の株式を取得するという形でスタートアップを支援する。「スタートアップのファイナンスは、まさに事業と表裏一体。戦略やビジネスモデルだけでなく、新しく取締役が入るときに株をどれくらい渡すか? というレベルまで一緒に考えていく」(磯崎氏)。文字通り“一緒に汗をかく”形で支援をするため、担当する案件は年に数件程度になる見込みだ。「『毎年1億円の売上げを作ります』というのではなく、『世の中を変えていく』という会社を対象にしていきたい」(磯崎氏)

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