それは途方もない注文だった。別の逸話では、その注文と、トップシークレットの携帯電話プロジェクト(NYTによると、そのコードネームは「Purple 2」だという)の別の要件を満たすために、Jobs氏の部下が海外に行ったことも示唆されている。
元幹部の1人は、Appleが中国の工場に頼って、発売のわずか数週間前にiPhoneの製造を刷新しようとしていたときの様子を語った。Appleは直前になってiPhoneのスクリーンの設計を変更し、生産ラインの全面見直しを迫った。新しいスクリーンは真夜中近くに工場に到着し始めた。
元幹部によると、工場の現場監督はすぐに同社の寮に住む8000人の作業員を起こしたという。各作業員はビスケットと1杯のお茶を与えられて、仕事場に連れて行かれた。それから30分以内に、12時間のシフトでガラス製スクリーンを角度のついたフレームにはめる作業が開始された。96時間後には、同工場は1日あたり1万台以上のiPhoneを生産していた。
「その速度と柔軟性は目を見張るものだった。米国に同じことをできる工場はない」(同幹部)
この引用部分や、記事中のほかの部分を読むと、これらの生産工場の何でもありの能力に感銘を受けそうになってしまう。そして、感銘を受けると同時に、不安を覚える。2010年までAppleのワールドワイド・サプライ・デマンド・マネージャーを務めていたJennifer Rigoni氏の別の引用コメントを紹介しよう。Rigoni氏は中国にあるFoxconn Technologyの工場施設Foxconn Cityについて、「彼らは一晩のうちに3000人を雇うことができる。一晩で3000人を雇用し、寮に住むことを納得させられる工場が米国にあるだろうか」と述べた。
同記事によると、Appleが2000年代前半、ほかの多くの電子機器企業に続いて、製造を米国外に移す決定を下したとき、安価で意欲的な労働力が要因の1つになったことは確かだという。しかし、サプライチェーンマネジメントや生産速度、柔軟性の方が大きな影響を及ぼしたと記事には書かれている。
同記事ではAppleの元上級幹部の発言を引用している。「今はサプライチェーン全体が中国にある。1000個のゴム製ガスケットが必要なら、隣の工場に頼めばいい。100万個のねじが必要なら、1ブロック先の工場に頼めばいい。そのねじに少し変更を加えたい場合でも、3時間あれば十分だ」
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