東京世田谷区下北沢駅から徒歩8分ほどの距離にある閑静な住宅街。「下北沢オープンソースCafe」は、そんな立地にありながら、毎日多くの人たちで賑わっている。
オーナーをつとめる河村奨(つとむ)氏は、もともとオープンソースの顧客管理システム「SugarCRM」の開発に関わっており、国内のコミュニティを運営していた。コミュニティでは月に1回のペースで勉強会を開催していたが、その際に問題になっていたのが「開催する場所」だったという。
当初は貸し会議室や勉強会参加者の会社の一室を借りるなどしていたが、毎回場所が変わることもあって準備やセッティングに手間がかかる。また、それぞれ仕事を持つ参加者が1、2時間程度の勉強会で本当にアイデアやノウハウが共有されるのかという疑問も生じてきた。「技術系の集まりでもあるので、継続的に機能し、技術の伝達や仕事におけるやりとりや課題の共有などができる仕組みを探していた」(河村氏)
河村氏自身も開発の仕事が忙しくなり、これまで中心となっていたオンラインでのやりとりだけでなく、実際に「場所」を作り、仕事や勉強会などの企画ができないかを模索していく中で「コワーキング」という働き方を知ったのだという。そして他のコワーキングスペースなども利用したのち、自身で下北沢オープンソースCafeをスタートすることを決めた。
「これまでの勉強会では、毎回テーマを1つに絞っていた。しかしコワーキングスペースで行えば、これまでの勉強会参加者以外の人も参加できるし、異業種の人たちとも出会える。つねに新しい人との出会いの機会があることはコワーキングの大きな魅力」(河村氏)。これまで取材したオーナー同様、コワーキングの最大の魅力は出会いだと語る。
車庫を改装してつくられた下北沢オープンソースCafeは、交流用と作業用にスペースを2つに分けているのが特徴だ。スペース内の本棚には、河村氏が持っている書籍の一部を並べるだけでなく、利用者の持っている書籍や自著などを並べる。Cafeの名の通り、有料でドリンクを提供しているが、2杯目以降を注文する際、自身が手がけている作業(タスク)を紙に書き、そのタスクが完了すれば割引する「DONE割」といったサービスを用意するなど、コミュニケーションのための仕掛けがいたるところに用意してあるのも特徴の1つだ。
どうして、そういった仕掛けを用意しているのだろうか? 河村氏は、「オーナー自身が楽しむことが大切だ」と言う。「オーナー自身がコワーキングの利用者である、という意識がとても大事。そうすることでコワーキングにいる人たちと自然に交流できる」(河村氏)。オーナーは場所を仕切る人という感覚ではなく、利用者と同じ目線でコワーキングという場を楽しみ、アイデアを提案する。そういった動きによって、利用者からも新しい企画や考えが生まれてくるのだという。
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