「コワーキング(Coworking)」という新しい働き方をご存じだろうか?
ソーシャルメディアをはじめとしたさまざまなツールが登場したことによって、ネットワークさえつながるのであれば、カフェや自宅など、場所に縛られることなく仕事をすることが可能になりつつある。
また、これまでに比べて安価な資本金でベンチャーを立ち上げたり、プロフェッショナルな技術を生かしてフリーランスのプログラマーやウェブデザイナーとして個人で事業を起こしたりと、さまざまなスタイルで働くことができるようにもなってきた。
これまで起業、独立と言えば、その多くが自宅やシェアオフィスからスタートするのが一般的だった。シェアオフィスでは、企業や個人ごとに個別の机や椅子、場合によってはパーテーションや個室が用意される。共有空間の中に独立した空間を作り、そこでおのおのが作業を行うのだ。
そんな中で、フリーランスやベンチャーの人たちが、業種を問わず交流し新しいアイデアやノウハウを共有したり、協働したりといった動きが生まれてきた。このような働き方をコワーキングと呼ぶ。「仕事は1人でするもの、企業単位でするもの」というこれまでの仕事の概念ではなく、「さまざまな人たちが集い、異業種同士や個人などとコミュニケーションをすることで、新しいアイデアを生みだし、ノウハウを共有し、コラボレーションを活性化していく」という概念なのだ。そして、そんな働き方を求める人たちの集まる場、「コワーキングスペース」が続々と登場している。
コワーキングスペースとシェアオフィスの大きな違いは、何よりもまず“オープンさ”だ。多くのコワーキングスペースは、仕切りのない広い空間にオープンデスクやソファーなどが用意され、利用者はその空間の中で自由に作業できる。
また、作業に没頭するだけでなく、利用者同士のやりとりが活発に行われることが多い。スペースをオーガナイズする人物が常駐し、入居者向けのイベントやセミナー、勉強会を開催するなど、参加している人たち同士のコラボレーションや創発を促すことに注力することも特徴だ。
欧米では、すでにさまざまな特徴を持ったコワーキングスペースが登場している。米国西海岸に複数の拠点を持つ「NextSpace」は、フリーランスのデザイナーやエンジニア、編集者やプログラマーなど主に個人で活動している人たちが集うコワーキングスペースで、入居者同士での異業種交流が図られている。
また、ニューヨークにあるコワーキングスペースの「NewWorkCity」では、ITを主とする起業家やデザイナー、エンジニアなどが作業の場として利用すると同時に、大学などと連携して学生や起業家志望の人たちに対する教育をするなど、コワーキングスペースを媒介にして新たな働きの場を見つけたり、働き方を考えるという動きをみせている。
ロンドンに拠点を置く「The Hub」は、社会起業家たちが集うスペースとして知られている。世界に20カ所以上もの都市にスペースをもち、グローバルに活躍する起業家同士のネットワークを構築している。
ニューヨークやサンフランシスコにスペースをもつ「Dogpatch Labs」は、写真共有サービスInstagramが誕生したコワーキングスペースとしても知られており、今も最先端のサービスや新しい開発を創発する場所となっている。
11月3日から11月5日にかけては、ドイツのベルリンで「Coworking Conference 2011」というイベントが開催された。ここでは、世界中でコワーキングに関わる人々が集い、その現状の調査報告や意見交換や議論がおこなわれるなど、世界的にもその動きは加速しているといっても過言ではない。
日本でも、そんなコワーキングのコンセプトをもった「場」が生まれつつあり、それぞれに特色ある空間が作られている。今回はその1つをご紹介する。
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