東京世田谷区経堂にあるビルの一角。ここに、日本でも初期の段階に立ち上がったコワーキングスペースがある。旅と平和代表取締役の佐谷恭氏が運営する「PAX Coworking」では、30名ほどが入るスペースに、日夜多くの起業家やフリーランスが集まっている。
佐谷氏はもともとコワーキングスペースと同じビルの2階に、“交流する飲食店”というコンセプトのパクチー専門の飲食店「paxi house tokyo」を2007年にオープンした。海外経験が豊富な佐谷氏。飲食店でも海外の街中でよく見られるような、街の人たちが気軽に会話したり遊んだりして、楽しそうに過ごしている風景を目指したという。 そして仕事に対しても明るくポジティブにしている人たちと接した経験をもとに、1日のうち多くの時間を使う「食事」や「仕事」の時間をもっと楽しく、有意義なものにしたいと考えていた。
「“作業をすること”と“仕事をすること”は別のもの。仕事であれば、人と会話したり何気ないところからアイデアや気づきを得ることがある。このようにして仕事が楽しくなることで、もっと充実した日々が送れ、面白いことができるのではないか」――佐谷氏が思い描いていた働き方が、海外において「コワーキング」という単語として定着してきていることを知り、また同時に実際に海外のスペースに行ってきた友人などからの話を聞いたことから、2010年7月にビルの3階のスペースで20名から30名ほどの人数を収容できる「PAX Coworking」をスタートした。
主な利用者は、IT関係のデザイナーやエンジニア。ほかにも、印刷業や製造業などの“モノづくり”を手がける人や、社団法人関係者、 編集者、士業関係者などが利用している。料金プランについては、24時間毎日利用可能な「Full-time Coworker」 プランから、週に2回程度利用する人向けのプラン、1日限定利用の「ドロップイン」など、利用者のニーズにあわせて複数用意する。起業前の人に対しては、最大6カ月までFull-time Coworkerプランを安価に提供する「起業家応援プラン」なども提供する。
コワーキングの魅力とはいったい何なのだろうか? 佐谷氏は、常に新しい人と出会えることだと語る。「毎日新しい刺激をもらえる。もちろんそのスペースを中心に活動している 人もいるが、ドロップインなどを利用して1日単位で来る人たちも少なくない。そうした新しい人たちには積極的に声をかけ、場合によってはその場にいる人を紹介したりする。そうして、新しく情報をもってくる人を出迎え、歓迎することで常にそのコミュニティに刺激が生まれ、いい循環が生まれること」(佐谷氏)
さらに、「そんな循環があるので 、コワーキングスペースに競争はうまれないと考えている。別のスペースと往来する人がいてもいい。むしろ、そういう人こそコワーキングという文化には一番大切ではないだろうか。シェアオフィスのように“会員を取り囲む”という発想ではない。つねに新しい情報や人のつながりなどを大切にし、そこで生まれる新しい出会いこそが、コワーキングが最も楽しいと感じられる部分」と、シェアオフィスとコワーキングとの違いを語る。
最近では、利用する人同士が自発的にプレゼンを行ったり、読書会をしたりするなど、アイデアや知識の共有、勉強会などが盛んにおこなわれている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」