起業バブル再来し、支援者らがエコシステムを形成--JVRが2011年のVC動向を発表

 ジャパンベンチャーリサーチ(JVR)は11月11日、ICT特化型の独立系ベンチャーキャピタル(VC)およびICT系新興企業の動向に関する調査レポートを発表した。

 レポートによれば、2000年以来のICTベンチャーのスタートアップブームとなった2011年は、若者を対象としたスタートアップセミナー、ビジネスプランコンテスト、教育プログラムなど、各種イベントが年間を通して各地で開催され、盛況を博した。同時に、インキュベーションオフィスを設置し、支援や出資をするという新たなエコシステム確立の動きがみられたという。

 ICTスタートアップバブル再来とも言われている2011年だが、ビットバレー誕生など数多くのウェブベンチャーが生まれる状況があった2000年とはブームの背景が明確に異なるという。

 まずは、システムのクラウド化が普及し、機材や開発環境などのシステムインフラへの多額の投資が不要になり、初期コストが低減したことで、起業ハードルが低下したことが挙げられる。

 また、2011年はスマートフォンやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などのアプリケーション開発プラットフォームが充実したほか、GPSなどの技術や利用が一般化し、それらを組み合わせたアプリの開発が容易になった。これにより、これらのICT技術とその利用に慣れ親しんだ若者から多くの事業アイデアが生まれた。さらに、就職難という経済環境要因も加わり、大企業に就職せずに自立する若者の増加や、大学生などの起業が活発化する要因となったという。

 こうした若者の起業を支援するプログラムを展開する独立系VCやICT新興企業のモデルとなっているのは、米国でも近年注目を集めるようになったY CombinatorやPlug and Play Tech Centerなどのベンチャー支援のエコシステムだ。

 2009年からのサムライインキュベートの活動を始めとして、ICT特化型の独立系VCやICT系新興企業のコーポレートVCによるスタートアップ企業を対象とした各種イベントの開催や、インキュベーションオフィスの設置が増えてきている。これらは、スタートアップラウンドと呼ばれる会社設立からの投資や、投資先を募るコンテストの開催、あるいはより多くの起業家を生み出し育成するビジネスプランコンテストの開催や支援プログラムの企画、そして、1人からでも入居できるインキュベーションオフィスの設置などを組み合わせ、資金面および経営面で総合的に支援するのが特徴となっている。

 また、シリコンバレー、アジアなどでの起業を会社設立時から実現させる、または海外で成功しているグローバルベンチャーを日本で立ち上げるという、「グローバル化」をテーマとして支援するプログラムも増えており、海外ベンチャーとの競争を意識して積極的に海外展開を図ろうとする動きもあるという。

 これらに加え、かつてのICTブーム時の起業経験者が成功して、ベンチャーエコシステムに戻ってきていることもブームの一因となっている。今後は、このICT業界で始まった動きがインキュベーションの新たな潮流として他業種へ広がるかどうかが注目されるとしている。

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