それでも、この発言はまだ優しく寛大な部類だった。Adobeの「プラットフォームエバンジェリスト」であるLee Brimelow氏は、Appleを激しく攻撃し、同社が押しつけようとしているのは「開発者に対する専制的な統制であり(中略)さらに重要なのは、Adobeへの反対運動における駒として開発者を使うことを考えている」と述べた。
Brimelow氏は、「個人的には」とした上で、「Appleでトップ交代がない限り、同社に対してこれ以上1セントも払いたくない。わたしは、書籍、楽曲、ビデオの購入をAmazonに既に移しており、他のサービスも継続的にチェックするつもりだ。ここではっきりさせたいのは、わたしは、皆が同じことをするように提案しているのではないということ。ある種のボイコットを組織でやろうとしているわけではない」と述べた。
皮肉なことに、Brimelow氏は正しかった。Jobs氏は、自分の考えを業界全体に押しつけようとしていた。これは単に同氏が、自分は他の誰よりも分かっていると考えていたからだ。しかし、Jobs氏を何年も見てきた人にとって、それは珍しいことではなかった。同氏の独りよがりなやり方は、Macのクローズドなアーキテクチャを守るという決定にまでさかのぼることができる。Jobs氏のやり方は常に議論の的で、1996年12月のNeXT買収により同氏が復帰したAppleがひん死の状態にあったころには、批判や「だから言っただろう」という反応を反対派から受けた。
しかし今回は、Jobs氏の技術に対する美的センスが正しかったことを証明する新たなケースとなった。米CNETに寄稿するHarry McCracken氏は2011年に入って、Adobeが嫌悪感を持ったに違いない記事を書いている。その記事は、「Mobile Flash: Always Exciting, Always Not Quite Here Yet(モバイルFlash:常に胸躍らされるが、決して登場しないもの)」というタイトルだった(そして、その内容はタイトル以上に手厳しいものだった)。McCracken氏は、モバイルFlashの今後のバージョンを渡されたとき、「これは素晴らしい。実際に人々が買えるデバイスで利用可能になったら知らせてほしい」と思わず反応してしまったことを明かしている。
Adobeは、すべての騒ぎを経て、「積極的にHTML5に寄与する」準備が整うよう自らを変え、HTML5が「複数のモバイルプラットフォームにわたるブラウザ上でコンテンツを作成および展開する最良のソリューション」と認めた。
そして、その死後1カ月にして、Steve Jobs氏がテクノロジビジョナリーと呼ばれるにふさわしい人物だったことが、またしても証明された。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したもので す。
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