最後に、例えばSony Entertainmentの音楽および動画カタログ内の音楽しか再生できないようなMP3および動画プレーヤーを購入したがらないのと同様に、ユーザーは1つの出版社からだけ書籍を購入したいとは思わない。Huluがテレビ事業で行っているように、仲介者は複数のサプライヤーの製品をまとめて提供することができる。
今日の電子書籍業界を見ると、状況がどのように変化しているかを把握できる。Random Houseは6つの異なるオンラインブックストアへのリンクとともに、同社のベストセラー電子書籍を宣伝している。Simon & Schuster(注意:米CNET Newsと同様、CBSの一部だ)は直接販売を行っているが、読者が同社の書籍をタブレットや携帯電話、ソニー製電子書籍リーダーに取り込むには、複雑なインストールプロセスが必要だ。HarperCollinsは書籍の一部をオンラインで閲覧できるようにしており、実際の販売業務は小売書店に引き継いでいる。ただし、直販へ移行する傾向は強まっており、例えば、HarperCollinsのBookperkサイトは同出版社から物理的な書籍を購入することを促すプロモーションによって、読者の興味をかき立てている。
確かにそれも変化ではあるが、オンラインを専門とする企業を取り巻く環境に比べれば小さな変化だ。Amazonと出版社の交渉は何かにつけて緊張をはらんでいるに違いない。なぜなら、一方はよく売れるように価格設定された商品を作り出す努力をしており、他方はそれによって個々の電子書籍の売り上げが悪化するのを防ごうとしているからだ。最も多くの電子書籍を買う顧客はサブスクリプションに最も大きな魅力を感じる顧客でもある、という事実を埋め合わせるだけの対価をAmazonは支払わなければならないだろう。
しかし出版社にとっては、サブスクリプションのオファーを受け入れることの方が、おそらくよい選択だろう。書籍を所有することの誇りは、電子書籍によってすでにかなり減じられている。夕食会の招待客が自宅に到着したときに自分の博識を誇示したい場合、Kindleを取り出す行為は、書籍で埋め尽くされた堂々とした本棚とは比較対象にもならない。ある出版社幹部が筆者に話してくれた言葉を借りると、電子書籍には「家具としての要素」がない。書籍はエンターテインメントサービスになってきており、出版社のカタログは倉庫から運び出される在庫ではなく、生きた資産となりつつある。
1つ鍵を握るのはBookishである。Bookishは出版社のHachette Book GroupとSimon & Schuster、Penguin Groupの米国部門が後援し、AOLが広告と販売をサポートするサイトだ。5月に発表された同サイトは、2011年夏に開設される予定だ。発表の際、Bookishは次のように説明された。
「次は何を読むべきか」という疑問に答え、書籍や著者、ジャンルに関する読書体験を深めることを目的とするBookishは、幅広いタイトルとフォーマットを網羅した独占コンテンツをそろえる。直接、またはほかの小売業者を通じて紙書籍や電子書籍を購入できる便利な機能も読者に提供する。Bookishは書籍小売業者との密接な連携に力を注ぎ、今後の数週間で、小売業者の取り組みを補足し、すべての読者の体験を向上させる方法を模索するよう働きかけていく予定だ。
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