Kahney氏と同様にDamer氏も、Jobs氏が指揮を執ってきた長年の間に行われたのは、Appleで働く数多くの人々に自らのマーケティングとデザインの哲学をたたき込むことにほかならないと考えている。それは驚くべきことではない。Damer氏は、Jobs氏が1976年ころにベンチャーキャピタリストのArthur Rock氏と初めて会った時のエピソードを引き合いに出して、Jobs氏の伝説的ともいえる鋭い視点を指摘した。「Rock氏は若きJobs氏に会い、さらにJobs氏の表情と確信を持った様子を見てとると、小切手にサインした」(Damer氏)。この話から多くのことが分かる。Damer氏によれば、Rock氏は「この男(Jobs氏)は自分が何を目指しているかを分かっているのだから、支援する必要がある」と判断したという。
そうした鋭い視点は、現在のAppleの文化に深く根付いているようだ。「その精神、つまりスタイルやデザイン、メッセージ、そして人々に好感を持ってもらうことを全体として包み込む精神は、Jobs氏が去った後もAppleに生き続けるだろう」(Damer氏)
少なくとも今の段階では、そうした心情に異論を差し挟むのは難しい。ソーシャルネットワーク上には、Jobs氏辞任の発表に対する人々の反応があふれかえっているが、Appleが革新的な製品を作り出すことをすぐに止めてしまうだろうと心配する声はほとんどないようだ。「Appleが続く限り、人々はあまり心配しない」と言うのは、The Unofficial Apple Weblogの編集者であるMike Schramm氏だ。「マニアの立場から言えば、大した問題ではないと思う。がっかりする話ではある。Jobs氏は先見の明のある人だから。しかし、Appleブランドへの信仰を失ってしまった人は多くはない」(Schramm氏)
ただ、まだどうなるか分からない。Schramm氏は、最初の衝撃が薄れてしまえば、人々はAppleの将来、つまりJobs氏辞任後のAppleについての気持ちを見直すかもしれないと指摘する。しかし同氏は、Jobs氏が今回Appleを去るのは、1985年に当時CEOだったJohn Sculley氏に解雇されたときとは違い、Appleの勢いと業績が最高潮にあるタイミングであり、Jobs氏は1 Infinite Loop、カリフォルニア州クパチーノにあるApple本社の壁の中にいる聖人のように尊敬されていることを指摘している。そしてそのため、何かを進めるという重要な決定はすべて、「Steve Jobs氏だったらどうしただろう」というフィルターに通されるだろうとSchramm氏は言う。
それでも、Apple製品に頼っていて、その代わりになるものはないと考えている人にとっては、24日は恐ろしい日となった。
「わたしにとって、それは気持ちの問題だ。Appleが成長や発展、向上を続けること、そして誰もが愛する、不思議な魅力を持った製品を作り続けることは分かっている。なぜなら、それは今やAppleの文化に組み込まれているからだ。それは彼らのDNAの中にある。自分が毎日使っていて、話をしながらキーボードを叩いているようなツールがなくなってしまうという心配はしていない。ただ、わたしが非常に心配しているのは、そうしたツールを可能にしたビジョンを持ち、テクノロジに対する考え方や理解の仕方、使い方を根本から変えてしまった人物のことだ」(Baio氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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