ハリウッドの映画スタジオが、人気のないスーパーヒーロー映画を復活させようとするように、Appleは米国時間6月6日、自社の製品の1つについて、元からある数多くの欠点を修正した新製品として復活させることで、その製品自体は終了させることを発表した。同社は同時に、「MobileMe」は失敗だったことを認めている。「iCloud」はMobileMeの苦い記憶を過去のものにできるだろうか。Appleはぜひそうしたいと考えている。
念のために説明すると、iCloudはAppleの新しいクラウド同期サービスであり、Appleが3年前に導入した、年間99ドルの有料サービスMobileMeの後継サービスである。MobileMeは2012年6月30日でサービス終了の予定。iCloudでは、ファイル、アプリケーションとそのデータ、メディアを、「iOS」デバイスや「Mac」、PCの間で同期する。音楽データもデバイス間で同期するが、ビデオコンテンツは対象外だ。
iCloudは、MobileMeに対してあった批判に全体的に対応している。99ドルという年間利用料があまり受け入れられなかったため、iCloudは無料だ。また、MobileMeは一部のアプリケーションにしか対応していなかったが、iCloudはより多くのアプリケーションで利用でき、iOSやMacの開発者も活用できる。
Appleの最高経営責任者(CEO)のSteve Jobs氏は、6月6日午前にiCloudを紹介する際、このサービスのアイデアが生まれたのは必要に迫られてのことだったと述べた。PCは長らくデジタルメディアのハブになっていたが、ここ何年かで、人々はそうしたメディアの入手や閲覧をポータブルデバイス上で行うようになったとJobs氏は語る。それによって、コンピュータからデバイスへ、デバイスからコンピュータへと、データを移動させる必要が出てくる。さまざまなデバイスメーカーが、そうしたデータの移動に各社独自のシステムを使用し、混乱を招いた。さらに重要なことには、この方法では、数年おきに買い替えるハードウェアにすべての責任がかかっているため、ユーザーはそのたびにデータを移動させなければならない。
Appleのソリューションは、クラウドにデータを保存して転送するものであり、デバイスが「入れ物」となるシステムを提供する。買ってきたデバイスにApple IDを入力すれば、iCloudとの同期によって、すべての設定が適用され、音楽やアプリケーションが追加されて、ほかのデバイスと同じ状態になる。
しかし、この大規模なソリューションはいまだに、囲い込みのアプローチを軸としている。そのアプローチは、批評家が同社のほかの製品で指摘してきたものだ。Appleのエコシステムの中にいる限りは問題ないが、そこから外に出たら自分のデータはついてこない。つまりAppleは、データ管理の方法を置き換えただけだ。
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