アドビ システムズは5月20日、同社のクリエイティブ製品の新バージョン「Adobe Creative Suite(CS) 5.5」の出荷を開始した。従来、18カ月周期でのバージョンアップが定例となっていたCS製品だが、今回の「.5」リリースを機に、メジャーバージョンアップは24カ月周期とし、その間に約12カ月周期で中間リリースを行うことが表明されている。その皮切りとなるCS 5.5出荷のタイミングで、改めてアドビ システムズ社長のCraig Tegel氏に今回のサイクル変更の意図について聞いた。
--製品のリリースサイクルをこのタイミングで大きく変えた理由は何か。
通常、ソフトウェア製品の世界で「.5」といったドットリリースはソフトウェア上の問題やバグを修正したものだ。しかし、今度の「Creative Suite(CS) 5.5」は、6に至るまでの「中間リリース」と位置づけており、単なるバグフィックスにとどまらない大幅な機能強化を行っている。
CSという製品が持つ大きな要素のひとつは「コンテンツオーサリング」だ。これまで、こうした作業は、印刷媒体やウェブをターゲットに行われていた。しかし現在、コンテンツ作成はそれ以外のさまざまなデバイスに対して行われるようになっている。例えば、スマートフォンやタブレットといったもので、これはビデオコンテンツなどについても同様だ。
5.5では、そうした多様なデバイスへの展開を意識した標準技術に対応し、機能強化を行っている。日本でも現在、スマートフォンが爆発的に増加している。タブレットも、iPadだけでなく、Androidを搭載した端末が続々登場している。
CSユーザーは、今、こういったデバイス向けにコンテンツを作る必要がある。ユーザーとさまざまな最新の技術を共有したいという思いから、通常のリリースサイクルを待ってもらうのではなく、このタイミングで5.5としてリリースすることに踏み切った。
CS 5.5での他の大きな要素としては電子出版の進展がある。今年の初めに「Adobe Labs」でInDesign向けの電子出版ツールを発表した。このツールにより、ユーザーはデジタルの出版物を作成してApp Storeや他のマーケットプレース経由で配信することが可能になった。
CS 5.5では、この電子出版のツールがInDesignに完全に統合されている。アドビが提供するツールとサービスにおいては、電子出版の「収益化」というのも大きな要素となっている。デジタルな出版物を作成するだけでなく、Omnitureのテクノロジを用いて、広告を追跡し、効果を測定できることで収益改善のサイクルを回していくことが可能になっている。
ツールのアップデートは、ユーザーが自社のビジネスプロセスや組織の生産性を検討して、メリットがあるときに行われるものだ。特に、現在CS 3や4を使っているユーザーにとっては、これらの新機能を検討する価値があるだろう。
--それ以外に、CS 5.5で特筆すべき機能は何か。
これまで追加機能として提供されていたものが完全に統合されている点は大きなメリットだ。HTML 5のツールやビデオ編集機能の強化、電子出版への対応などはそれにあたる。
また、別の要素としては「Photoshop」のSDKの提供がある。CS 5.5のリリース時には、この新たなSDKを使って作成した「Adobe Color Lava for Photoshop」「Adobe Eazel for Photoshop」「Adobe Nav for Photoshop」と呼ばれる、3つのiPad向けPhotoshop連動アプリケーションの提供を開始した。このPhotoshop向けのSDKを利用して、パートナーはワークフローにクリエイティビティを取り込むための機能を開発し、ビジネス機会を得ることができる。
今後はユーザーのニーズを見ながら他のデバイス向けのものや、他のアプリケーションのSDKも提供していく用意がある。業界で標準的な技術を開放するのはアドビの伝統となっている。
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