--確かに、このプロジェクトで世界最高峰の絵画と生まれて初めて接する人も多いかもしれませんね。そのエクスペリエンスを良いものにしなければというプレッシャーはどれほどのものでしたか。
Brush氏:以前にも画期的なプロジェクトに携わったことがあり、そのときにも優れたエクスペリエンスを実現しなければというプレッシャーを強く感じていました。例えば、北京オリンピックのオンライン中継サイトの構築といったプロジェクトです。しかし今回のプロジェクトは他と違うものでした。なぜかこのプロジェクトでのプレッシャーは他の場合とは違っていました。プロジェクトに関わった誰もがそう感じていたはずです。その理由の1つは、制約があったことです。単に芸術作品を公開してアクセスできるようにするという問題ではありませんでした。学芸員が明示的に行うべき決定を、われわれが行うことがないようにしなければという大きなプレッシャーもありました。もちろんインターフェース自体から何か具体的なことが伝わる可能性はありますが、われわれの方で作品の展示の仕方に一定の見方を当てはめることがないように必死に取り組みました。
--学芸員が明示的に行うべき決定を避けなければというプレッシャーについて、もう少し詳しくお話しいただけますか。なぜそのような決定をしてはいけないのでしょうか。また、どのようにしてその決定を回避したのですか。
Brush氏:最初に向き合わなければならなかった問題の1つは、サイト自体がメタ美術館にならないようにすることでした。美術館というものは、自館の所蔵作品を自館の使命に沿った形で提示するという、文化と市民としての責務を負っています。われわれはその責務に不当に立ち入りたくはありませんでした。そのため、プレッシャーの原因は、単に文化的価値があるものだからサイトを楽しく使いやすいものにするということだけではありませんでした。実際に美術館に足を運んで得られる体験と、オンラインで得られるエクスペリエンスの間にはっきりと一線を引くモデルを作り出す必要があるということもその原因でした。このサイトがきっかけとなって人々が実際に美術館に足を運ぼうという気持ちになってほしいと願っています。本質的に、芸術作品を見るという体験の全く新しいモデルを作り出そうとしたのです。責任の大きな仕事でした。
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