AppleでのSteve Jobsは、長期にわたる同社の驚くべき成功を語るうえで不可欠な存在、というのがほぼ一般的な見解だ。しかし、同氏がいなくても、Appleはかなり上手くやれる(少なくとも一部の事柄については)ということを、われわれは目撃している。
振り返ってみれば、立て続けに好成績を残した2009年はじめの四半期も成功に終わっている。「iPhone 3GS」の発表、さらに、新しい「iPhone OS」や「Mac OS」の仕上げ、そして、刷新された「iPod」ラインなどは、Jobs氏が肝臓移植手術を受けるために2009年1月から不在にした期間にあった出来事だ。
Jobs氏の不在を最小限にしか感じさせなかった功績は、最高執行責任者(COO)であるTim Cook氏によるところが大きい。
Jobs氏は米国時間1月17日、自身の健康に注力するため期間未定の休養を取ることを伝えるメールにおいて、同氏に代わる一時的な指揮を任せるために同じ人物を指名した。Cook氏は、Jobs氏不在の間、Apple運営のために日々の業務を引き受けることになる(いずれにしても同氏は、通常業務で基本的に同じことをしているが)。恐らく、同社内における調整は小規模なものとなる。Jobs氏は、創業者であり、ビジョナリストであり、社外に対する同社の顔でもある(Jobs氏は17日のメールで、休暇中であっても戦略的決定には関わる予定であることを述べている)。Cook氏は、Jobs氏が持つ非常に具体的かつ詳細で、時に壮大な、そして、常に秘密に保たれているコンシューマー向け技術におけるビジョンを、人々が買いたいと思い、かつ、同社保有の現金を増やし続ける製品にすることを確実に実行できる人物である。
GartnerのアナリストCarolina Milanesi氏は17日、「Tim Cook氏は、Jobs氏が2009年に不在となった際、その代理を非常にうまくこなした。それは、Appleがボーナスに値すると判断した程だ」と述べた。「このことは、同社が、Cook氏の仕事ぶりに対していかに満足していたかを物語っていると思う。Cook氏は、Apple社内外で多くの尊敬を集めており、自身が同社をうまく運営できるといことを証明した」(Milanesi氏)
しかし、次に浮かぶ疑問は、もし求められるならば、いつの日かJobs氏の仕事を完全に引き継ぐことができるのはこの人物なのかということである。Cook氏は、自分の上司から完全な信頼を得ており、既に描かれているJobs氏の大局的見地に基づいた計画を実行する能力があることは示している。それに対してこれは、Jobs氏抜きのAppleという、投資家たちを神経質にし、いずれ現実のものとなる事柄への長期的に見通す材料といえる。
Cook氏は、原価管理、サプライチェーン、販売のような業務における基礎部分に注力している。同氏は、コンセプトデザイン、コンピュータのNatural User Interface(NUI)、技術とリベラルアーツの交わり、または、Google、Amazon、Research In Motionらの次の一手に思案することに執着して遅くまで起きているという人物ではない。それは、Jobs氏をJobs氏たらしめる事柄であり、AppleをAppleたらしめる事柄でもある。
そして、これこそが、Cook氏、または、他の誰かがいつの日かJobs氏を引き継ぐことを考えた場合、投資家たちにためらいを生じさせる事実だ。
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