音楽を聴いているとき、イヤホンはApple製デバイスに接続されているという人が多いだろう。電話をかけるときはどうか。スマートフォンを購入する5人に1人が「iPhone」を選んでいる。そして、コンシューマー向けノートブックの販売台数で、Appleのシェアは2010年第3四半期には10.6%に跳ね上がった。
そこで大きな疑問が出てくる。企業のIT部門の担当者で、従業員が未だに「Windows XP」搭載ノートPCを使っていても問題ないと考えている人々(ついでに言えば、そのことについて愚痴を言うのはもうやめよう)は、このようなApple製品群に興味を示すだろうか。
Appleの幹部はそうあってほしいと願っている。ここ数カ月の間に同社がアピールしてきたことはシンプルだ。その内容は、企業に勤める人々はすでに多くのApple製品をプライベートで使用して気に入っており、「iPad」は、ウェブベースの企業向けソフトウェアを使うのに非常に便利な軽量ツールだというものだ。これを単なるリップサービスと思う人もいるかもしれないが、Appleは今や、明らかに古風なタイプに属する米Unisysのコンサルタントと協力して、大企業や政府機関の顧客にさえアプローチしようとしている。
Appleがそのような企業分野への進出を果たせたとしたら、Steve Jobs氏にとって最大の逆転劇となるかもしれない。Jobs氏はこれまでのところ、企業市場では非常に不利な状況にあるからだ。IDCが収集したデータによると、2010年第3四半期の時点で、企業顧客向けに販売されたコンピュータ4080万台のうち、140万台がAppleのものだったという。これは企業向けコンピュータ販売全体の3.6%に相当する。
すべては歴史、そして慣性の法則のせいだ。大企業は通常、WindowsベースのPCの販売業者(多くの場合サードパーティー)と契約を結んでいる。販売業者を変えると、コストが高くなる可能性もあるし、手間もかかるかもしれない。また、保守的であることが多い大企業のIT部門スタッフの間で、「Macは単なる『おもちゃ』で、Windowsベースのシステムとは簡単に統合できない」という古風な認識が広まっていることが、阻害要因となる場合もある。モバイル分野では、企業のIT部門はだいぶ前にResearch In Motion(RIM)の「Blackberry」を使うことに慣れてしまった。iPhoneをサポートするとなると、複雑な点が増え、作業コストが膨らむおそれがある。多くの人々は、Appleがサーバを販売していることさえ知らない(実際に販売している)。ではiPadはどうだろうか。タッチスクリーンタブレット市場は、1年前には存在しなかったと言われるかもしれない。
最近までAppleのビジネスセールスマネージャーを務め、さまざまな規模の企業への企業向けシステムの営業活動に従事していたAndrew Kaiser氏は、多くの場合、販売のネックとなる最大の障壁は、今から何年も前に育まれた考え方だと述べている。それは、「Office for Mac」の登場前であり、仮想化技術が出てくる前、AppleがIntelチップに切り替える前の考えだという。「Apple製品をWindowsプラットフォームに統合できることを知らない人もいた」(Kaiser氏)
教育ソフトウェアメーカーWestEdでインタラクティブプロデューサーを務めるThomas Caleshu氏は、そのような状況を従業員として直接経験した1人だ。Caleshu氏はプライベートでiPhoneとMacを使用している。IT部門のスタッフに、自分のiPhoneと「MacBook」を会社のネットワークに追加してもらおうとしたところ、技術的には何ら問題がないにもかかわらず、IT部門スタッフは強い疑念を示したという。
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