パナソニックは、10月6日まで実施した三洋電機とパナソニック電工に対する株式公開買い付け(TOB)によって、三洋電機の80.98%、パナソニック電工の83.93%の株式を取得すると発表した。完全子会社化には3分の2以上の賛同が必要だが、今回のTOBによって、いずれも議決権ベースで3分の2を上回る株式数を確保できるため、子会社化に向けた作業が加速する。
TOBは8月23日から行われ、三洋電機1株当たり138円、パナソニック電工1株当たり1110円を提示。応募株式数は三洋電機が18億9146万9246株、パナソニック電工が2億3798万8184株となり、買い付け総額は、三洋電機が約2610億円、パナソニック電工が約2641億円となる。10月14日には公開買い付けの決済が行われ、2011年1月には、今回の買い付け価格と同一価格を基準とした株式交換比率を発表。公開買い付け後の残った株式については、パナソニック株との株式交換を行う。
こうした作業を経て、2011年3月末までに三洋電機およびパナソニック電工の上場廃止が決定し、4月1日からパナソニックの完全子会社となる。
今回のTOB成功は、7月に発表した2社の完全子会社化に向けた大きな一歩だ。
この結果を受けて、パナソニック社長の大坪文雄氏は「グローバル企業として、世界の競合と負けないスピードを実現すること、そして、家まるごと、ビルまるごとの提案ができる世界唯一の企業グループになることができる。そうした強い思いのなかで、完全子会社化を決め、TOBを行ってきた」とコメント。「8月5日からは、それぞれの事業におけるワーキンググループを設置し、3社のシナジーを大きな成果として、またグローバルに展開するためにどうすべきかを、全社員の知恵を集めて取り組んでいる。経営統合に向けた進捗状況には自信を持っている」などと語った。
パナソニックは、2004年4月にパナソニック電工の株式を51.0%、2009年12月には三洋電機の株式を50.05%取得し、それぞれ連結子会社とすることで、経営方針を一本化していた。だが、連結子会社化から大きく踏み出し、2社を完全子会社化する最大の理由は、パナソニックが創業100周年となる2018年度の目標に掲げている「エレクトロニクスNo.1の環境革新企業の実現」に向けた、世界で戦える経営体質への転換にある。
同社では「お客様接点の強化による価値創出の最大化」「スピーディで筋肉質な経営の実現」「大胆なリソースシフトによる成長事業の加速」の3つが今回の完全子会社化によって実現されるメリットと説明しているが、大坪氏は「これまでのように、3社がお互いを尊重し、独立性を意識しながらコラボする体制では、致命的な遅れが出ると感じた」ことが背景にあると語る。
例えば、よりシナジーを出すために製品を統合し、ブランドもひとつに統合するとなった場合、連結子会社の状況では、三洋電機やパナソニック電工の株主をはじめとするステークホルダーに対する配慮が必要になり、調整にも時間がかかる。つまり、なかなか製品統合には踏み出せないという状況にあるのだ。それでは、思うようなシナジー効果は発揮できない。
大坪氏が語る「致命的な遅れ」とは、連結子会社であるがゆえの構造的な経営判断の遅れが生じることを指す。いくらスリム化を図り、意思決定の速度を速めても限界があるというわけだ。
「世界の同業他社は、目標を定め、そこに対して100メートル競争のスピードで事業を拡大している。それに対して、我々は中距離競争のスピードで短距離走の相手と戦っていたのではないか。3社が持つ経営資源をテーブルに並べて、より強い体制に組み替える。真に一体となったパナソニックグループとして取り組んでいくことが必要である」と大坪氏は語る。
TOBの終了によって、完全子会社化に対する方向性が明確になったことで、新たな体制構築に向けた準備が、より本格的かつ具体的に進むことになる。
パナソニックでは、2012年1月をめどに3社の事業/販売部門を統合および再編する。「コンシューマ」「デバイス」「ソリューション」の3事業分野ごとに事業特性に最適なビジネスモデルを再構築する計画だ。またブランドに関しても、将来的には、原則「Panasonic」へ統一する方針を打ち出す。「家まるごと、ビルまるごと、地域まるごとというパナソニックが目指す方向において、エコのブランドとして統一していくことになる」とする。
この体制をベースに、2012年度を最終年度とする中期経営計画「Green Transformation 2012(GT12)」の達成に挑む。同計画では、2012年度の経営目標として、売上高10兆円、営業利益率5%以上、ROE10%、フリーキャッシュフローが3年間累計で8000億円以上、2005年度基準で5000万トンのCO2削減貢献を掲げている。
成長のための戦略実行スピードの向上、そして、「家まるごと」「ビルまるごと」といった総合力を発揮できる体制が整うとともに、意思決定の迅速化とグループシナジーの最大化により、GT12をよりダイナミックに加速し、さらなる飛躍を果たすことが、今回の完全子会社化によってもたらされる価値ということになる。その具現化に向けたアクションは、これからがいよいよ本番だ。
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