「テーマは“Ignite Japan!”」――。8月から新しい会計年度に入ったシスコシステムズ合同会社代表執行役員社長の平井康文氏は、新しい経営ビジョンをこう掲げた。
8月18日に社長に就任した平井氏が掲げる「Ignite Japan!」が意味するところは、同社の製品群の対象となる「企業や消費者、地域コミュニティに対してネットワークセントリックなソリューションを通じて、日本の社会や経済、環境イノベーションを索引する」(平井氏)ことだという。このところ元気がない日本の経済や社会を「Ignite=爆発させたいという思いから考えた」(平井氏)言葉だという。
同社のそうした新しい事業戦略は、(1)ボーダーレスネットワーク、(2)IP NGN、(3)データセンター/仮想化、(4)コラボレーション/ビデオ――という4本柱で構成される。
ボーダーレスネットワークは、同社の代表的製品であるスイッチやルータで、たとえば企業の内外をネットワークで結びつけるという構想だ。IP NGNは、通信事業者(キャリア)などのサービスプロバイダーに向けて、新しいネットワークを提供するという考えを示している。
データセンター/仮想化は、「クラウドコンピューティングに必須」(平井氏)という仮想化技術をネットワークだけではなく、サーバやストレージにも拡張してデータセンター全体を仮想化するという構想だ。同社がEMCやヴイエムウェアとともに提供する、プライベートクラウド向けIT基盤製品の「Vblock」やデータセンター向けのスイッチ「Nexus」シリーズなどが具体的な製品だ。
コラボレーション/ビデオは、同社が買収したTandbergのビデオ会議システム、SaaSで提供されるウェブ会議システムの「WebEx」など映像を活用してコミュニケーションし、企業内外でのコラボレーションを推進して業務効率を向上させようという考えだ。これに関連して同社副社長の堤浩幸氏は「2013年までにインターネットのトラフィックの90%を映像が占める」という調査予測を挙げて、映像によるコラボレーションが今後普及するだろうとの見立てを明らかにしている。
そうした4本柱で事業を展開していくシスコシステムズが今後注力していく分野として平井氏は、クラウドと「スマートコネクテッドコミュニティ」を挙げている。スマートコネクテッドコミュニティとは、現在注目されているスマートグリッド(次世代送電網)を拡張したもので、電力だけでなく、交通網や医療機関、教育機関、住宅、ビルなどの商業施設をネットワークで結んで、持続可能なサービスを提供するというものだ。
スマートコネクテッドコミュニティについて平井氏は「これまで社会のインフラといえば、電気、ガス、水道といわれてきたが、IP網が4番目の社会インフラになっている」と表現。これまでシスコシステムズといえば、企業内のIP網の基盤となるスイッチやルータを提供してきたが、今後は企業という場所をさらに拡大させて社会全体に進出すると表現することができる。
平井氏の掲げる新しい事業戦略ではパートナー企業との関係性も変えていく。これまでは製品やソリューションごとの「縦割りのパートナーシップで構成されていた」(平井氏)のを、先に挙げた4本の柱を軸にしたパートナーシップで構成したものにしていく方針を明らかにしている。
また平井氏は、事業戦略として「次世代企業の創造」も打ち出している。既存の企業組織の在り方を「変革して、ダイナミックネットワーク型組織を創りあげる」(平井氏)と説明している。この試みでは「シスコ自身が次世代企業に変わっていく」として、シスコシステムズ内部での組織や業務の在り方を変えて、ほかの企業の見本となることを目指している。そこでは当然「シスコが提供するシステムやツールを活用」(平井氏)して、シスコシステムズが「ベストプラクティスのロールモデルになっていく」(平井氏)と説明する。
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