NTTドコモは7月6日、携帯電話を特定の通信キャリアでしか使えないように制限する「SIMロック」を解除する方針を固めた。この決定は今後、他のキャリアやメーカー、そしてユーザーにどのような影響を与えるのだろうか。本稿で、各キャリアのSIMロック解除に関する動きを振り返る。
各キャリアがはじめて一堂に会し、SIMロック解除に対する考えを示したのが、4月2日に総務省が開催した「SIMロックに関する公開ヒアリング」だ。
NTTドコモは「SIMロックの解除はユーザーの意向に従うべき」という前提のもと解除に前向きな姿勢を示したが、ソフトバンクは「SIMロック解除で、ユーザーに1つの端末を長期的に使ってもらう料金施策が行えなくなるのであれば、端末価格を上げざるを得ない」とし、一方的な解除要請には否定的であった。
また、ヒアリングの2日前となる3月31日にはKDDIが記者会見を開催し、各社の通信方式や周波数、サービスの技術仕様が異なることを理由に、SIMロック解除が大きな意味を持たないことを主張。ヒアリング当日もこの姿勢は変わらなかった。
最終的に、SIMロック解除については法制化ではなくガイドラインとして示し、事業者間の話し合いで具体的な方法を決めていくべきという意見で一致し、ヒアリングは幕を閉じた。
そして、公開ヒアリングから約3カ月後となる7月6日、他社に先立ちNTTドコモが、2011年4月以降に発売する端末にSIMロックを解除する機能を導入していく方針を明らかにした。これは、6月30日に総務省が発表したガイドラインに基づくものだ。
これにより、まずはNTTドコモと通信方式が同じソフトバンクのSIMを利用できるようになる見込み。また、ソフトバンクのSIMロック解除について、NTTドコモは「両社がやってこそ公正な競争になる」とコメントしている。
しかし、ソフトバンクは今回の報道についてノーコメントとしながらも、「法制度として(SIMロック解除を)強制化されるのは、おかしい」という従来の考えを崩さない。SIMロックによって端末やサービスを適切な価格で提供できるとした上で、端末普及という観点から、SIMロック解除についてはよく検討する必要がある、というスタンスに変化はないとの認識を示した。
なお、今回のドコモのSIMロック解除への動きについて、携帯電話研究家の山根康宏氏は以下のようにコメントしている。
「6月の総務省によるSIMロック解除の指針発表後、NTTドコモが率先して解除の方針を打ち出したことは評価に値する。現時点ではサービスの互換性などの問題もあるが、業界のリーダーであるNTTドコモの動きは他社を牽制し、いずれは各社追従することになると思われる。日本の携帯電話業界には激震となるだろうが、SIMロック解除により今後端末やサービスプラットフォームの共通化の動きが加速すれば、結果として消費者にも業界にも大きなメリットを与えるものになるだろう」
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