携帯電話のSIMロック、解除を要請へ--総務省

永井美智子(編集部)2010年04月05日 12時00分

 総務省は4月2日、携帯電話のSIMロックのあり方に関する公開ヒアリングを開催した。内藤正光総務副大臣が通信事業者や端末メーカー、消費者団体の代表から意見を聞き、ユーザーの希望に応じて携帯電話のSIMロックを解除する方向で議論を進める考えを示した。

 SIMロックとは、携帯電話端末を特定の事業者のSIMカードでしか使えないようにする制限のこと。例えば現状、NTTドコモの端末にソフトバンクモバイルのSIMカードを差し込んで使うといったことはできない。

 SIMロックがなくなることで、利用者は通信事業者と端末を自由に選んで組み合わせられるようになるほか、契約する通信事業者を変えても同じ端末が利用できるようになるメリットがあると内藤副大臣は話す。また、業界の競争が促進され、料金の低下やサービスの多様化が期待できるという。

 ただ、通信事業者の利用する周波数やサービスの仕様、通信方式などが違うため、単純にSIMカードを差し替えればよいという問題ではない。たとえばiモードメールやEZweb、端末の遠隔ロックなどに関してはネットワークとサービスが一体化した形で仕様が作られているため、他社のSIMカードを差せば利用できなくなる。

 NTTドコモは「ユーザーの意向に従うべきだが、SIMロック解除に伴う影響を理解してもらった上で(各ユーザーに)判断してもらう必要がある」とした。ソフトバンクモバイルも「SIMロックフリー端末がもっとあってもいいというのであれば、そのとおりだと思う。しかし通信事業者はユーザーに端末を長期的に使ってもらえることを前提にした料金施策を採っている。SIMロック解除でそれがなくなるのであれば、端末は高くならざるを得ない」とした。

 また、端末メーカーの代表である一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)も、「SIMロックを解除しても、共通で利用できるのは通話とSMS(ショートメッセージ)のみ。単機能端末をユーザーは望んでいない」と話す。すべての通信事業者のサービスに対応した端末を作るとなると膨大な工数がかかり、端末の価格は高く、さまざまなチップなどを搭載するために大きくなってしまうと訴えた。

 これらの意見に対し、内藤副大臣は「(通信事業者の独自サービスに対応しない)スマートフォンであればSIMロック解除に反対はないか」と質問。これにはCIAJも「スマートフォンは端末と通信事業者のサービスが一体化されていない」として、問題ないとの考え方を示した。また、KDDIは「通信事業者が直接販売や端末開発に携わらないものが増えてくれば、SIMフリーがユーザーにも一般的に受け入れられるのではないか」との考えを示した。

 NTTドコモも「基本的にはユーザーの選択に任せるべき」と同意。ただし、スマートフォンの定義については検討が必要と指摘した。「技術動向としては、スマートフォンと既存の携帯電話は融合し、境目がどんどんなくなっていく。携帯電話にもAndroidを採用する方針であり、逆にスマートフォンにおサイフケータイやiモードメールを対応させて欲しいという要望は非常に強い。スマートフォン/非スマートフォンと分けると混乱が起こる」と話した。

 イー・モバイルはSIMロックのない端末の市場を、既存の携帯電話市場と違う新たな市場として立ち上げるべきとの意見を表明。NTTドコモの通信網を借りて通信サービスを展開している日本通信は、SIMロックにより端末が実質0円で販売されていることを問題視した。

 「ワンセグ、おサイフケータイ、動画などの機能が標準搭載されているが、本当にみんなにとって必要なのか。端末が0円のため、その機能がついていないものを買うインセンティブがないから、高性能の端末を使っているだけではないか。そのコストは結局利用者が払っており、知らず知らずのうちに高いものを買っている現状がある」(日本通信)として、SIMロックを解除することで端末の競争環境が是正され、全体的なコストが下がると訴えた。

 SIMロックの解除については、法制化ではなくガイドラインとして示し、事業者間の話し合いでユーザーサポートも含めた具体的な方法を決めていくべきとの意見で一致した。

 また、「すべてをSIMロックフリーにして、SIMロックを禁じるということには反対だ。それはオプションとしてユーザーが決めることであり、メーカーとしてはどちらも作りたい」(CIAJ)、「SIMロック端末を作ってはならない、というのは絶対に反対だ。既存のエコシステムが壊れ、大混乱を起こす」(ソフトバンクモバイル)とし、SIMロックを一律に禁止するのではなく、SIMロックフリー端末とSIMロック端末が併存し、ユーザーが自由に選べることが重要との意見が挙がっていた。

 内藤副大臣は「ユーザー本位の視点で、1つの結論に達することができた。我が国の方向を大きく変えたと将来評価されると思う。原口大臣に早急に伝え、総務省として関係各位と相談しながらガイドラインを策定し、ユーザーが自由に通信事業者と端末を選べるようにしたい」と意気込んだ。

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