Microsoftにはやるべきことがたくさんあった。同社は「Longhorn」の開発作業、つまり「Windows XP」の大幅なオーバーホールの最中だった。全く新しいファイルシステムを作り上げ、そのほかにも大きな変更をするという困難に直面して、同社はこのプロジェクトの規模を縮小し、「Windows Vista」となるOSを作った。Windows Vistaは、これまでにも多く伝えられている欠点に加えて、グラフィックスによる負荷が高くなったため、今まで以上にローエンドのハードウェア向きでないOSになり、バッテリ寿命の不足も深刻になった。
またMicrosoftが選択したのは、Windowsをデバイスに詰め込むことであり、よりスリムなOSを用意することではなかった。そのようなOSは、過去の製品との互換性はないかもしれないが、もっと素早く起動できて、電力効率の良いチップで駆動するものだったかもしれない。
同社には、ほかにも対処しなければならないものがあった。それは危機でもありチャンスでもあるもので、さらにはっきりと目の前にあるものだった。ネットブックだ。2007年に7インチのLinuxベースの「Eee PC」が登場すると、長い歴史を持つ、MicrosoftのPC市場支配のもろさが露呈した。コンピュータメーカーは、PCのハードウェアの低価格化と小型化を実現する方法を探っていたが、Windowsはまだ、大型のスクリーンと大容量のハードドライブを備えた高価格マシン向けのものだった。
Microsoftは、Windowsの低価格バージョンを提供するとともに、わずか数GバイトのフラッシュメモリしかないマシンでもWindows XPが稼働するようにするという、効果的な対応を行った。IDCによれば、同社は現在、デスクトップやハイエンドノートPCと同様に、ネットブックでも約95%の市場シェアを誇るという。
しかし、MicrosoftはiPadを実現したハードウェアを予見できていたのに、そのチャンスを捉える適切なハードウェアを作り出せなかった。この事実は、同社が巻き返しを臨むのであれば、さらにいくつかの課題に対応しなければならないことを示している。
Windowsの開発プロセスは改善されたものの、このMicrosoftの主力OSの製品サイクルは比較的長いままだ。Appleは先週、4年間で4バージョン目となるiPhone用OSをリリースしたが、Microsoftは、Windowsの主要バージョンを過去10年間で3つしか出していない。
同社は内紛にも苦しんでいる。Microsoftはつい最近、「Courier」という開発コード名を持つ、同社独自のタブレットプロジェクトを中止した。同社の動向に詳しい人々は、このプロジェクト中止の原因の一部は、CourierのようなプロジェクトがWindowsチームに属するのか、あるいは「Zune」「Xbox」「Windows Phones」などを作り出したデバイス担当部門に適しているのかという、社内の論争にあるとしている。Entertainment & Devices部門を率いていたRobbie Bach氏と、重要な補佐役だったJ Allard氏の退任も、この論争に端を発するという説もある。ただし両氏とも、Microsoftを離れるのは別の理由だとしている。
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