4月15日、グーグルは従来の決算発表のやり方を改め、プレスリリース経由の発表を行うことなく、自社のIRウェブサイトのファイナンシャル・ニュースに2010年第1四半期の財務結果を掲載した。PDF版で12ページ(45k)。掲載されたリリースには決算サマリーのパワーポイント(14ページ)も用意された。
今後も、今回と同様、ファイナンシャル関連の発表はプレスリリースの配信業者に頼ることなく、自社のIRサイトのみで行うと言う。
今回のグーグルの行動は、公平開示規則の枠内で自社ウェブサイトやブログを使った情報開示を認めた米証券取引委員会(SEC)の「2008年企業情報開示ガイドライン」に沿ったものだ。
公平開示規則というのは、アナリストや機関投資家など特定の人たちに対する重要情報の優先開示を禁止し、企業は誰に対しても「同時に、同じ内容を、広範に」公開しなければならないとしたSEC規則で、2000年に施行された。
その公平開示規則の施行にあたって、SECは重要情報の公表モデルを示したがそこでは、まず発信する情報をプレスリリースで開示するとしていた。決算発表などIR関連の発表が最初にプレスリリース配信業者に発信され、それから多くのメディアやインターネットのニューズ・プロバイダーに配信される根拠はここにあった。
それが、ウェブ2.0時代を迎えた2008年、SECは「2008年企業情報開示ガイドライン」を発表し、1.自社のウェブサイトが認知された配信チャネルであること。2.自社のウェブサイトへの掲載情報が証券市場が利用できるほど一般に広く伝播していること。3.投資家と市場が掲載情報に反応するだけの十分な時間があること。――の3点に留意し、企業サイトやブログでの開示も法的に有効な情報開示ツールと認めた。
それ以来、プレスリリースの配信業者を経由しないで、自社サイトで四半期決算などの重要情報を発信する企業が登場するのは時間の問題だった。すでにいくつかのナスダック上場企業がこうした行動に出ている。
しかし、今回はグーグルが自社サイトでの発表に踏み込んだ。グーグルのIRサイトは投資家に広く「認知されたチャネル」の1つだとみなされてきた。と言うのも、すでに、この数回、グーグルの四半期決算を報道するオンラインニュースやブログには同社のIRサイトにリンクが張られていたからである。
ページリンクはインターネットで信頼を判断する第1の物差しである。事実、グーグルの検索はウェブページのリンクを検索アルゴリズムで検証した結果である。
この結果、今後もプレスリリースの配信業者経由で投資家向けに決算発表の全文を発表する企業は、自社のウェブサイトが「認知されたチャネル」であると主張しにくくなるのではないだろうか。それだけに、今後グーグルに続く動きが続くと見られる。
◇ライタプロフィール
米山 徹幸(よねやま てつゆき)
IRウォッチャー、埼玉学園大学教授。英国IR協会「IRベストプラクティス」の日本版冊子を編集・刊行するPFPに参加。最近の寄稿に「SECが気候変動問題の情報開示で「解釈指針」を公表 〜求められるIR対応〜」(宣伝会議「広報会議」10年6月号)など。
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